ライフスタイル

22脚の椅子のために家を建てた!椅子愛が過ぎる部屋|あの人の偏愛部屋vol.3

目次

なにかに夢中になっている人は魅力的です。たとえそれがいき過ぎた愛だとしても。
抑えきれない愛を詰め込んだ部屋にお邪魔して、その人のこだわりのライフスタイルを探る企画「あの人の偏愛部屋」

第3回は、mashleyさんの「椅子愛が過ぎる部屋」です。
mashleyさんが現在所有している椅子は、なんと22脚。愛でるために、ほとんどの空間に椅子を置いています。特に思い入れがあるのは、1950年代から1960年代につくられたいわゆるミッドセンチュリーの椅子。北欧やアンティークなどの家具との組み合わせを思う存分楽しんでいます。椅子のために建てられた家の、椅子を中心とした部屋づくりをご紹介します。

1.椅子愛のきっかけは家具修理の仕事

たくさんの椅子5年程前、家具修理の仕事をしていたmashleyさん。当初はインテリアへの興味は薄く、知識もなかったため、1脚10万円以上する椅子の存在を知って驚愕したそうです。そんなmashleyさんを変えたのは、さまざまな椅子との出会いでした。

仕事を通してさまざまな椅子に出会い、実際に触れるなかで“価値のある椅子”が分かるようになりました

椅子への興味も湧いてきて、本を読み漁りました。歴史をひもとくうちに椅子にかけるデザイナーの思いを知り、ますます椅子にはまっていったそうです。

『世の中の人に心地よく椅子を使ってほしい』、『世の中の住まいを変えたい』というデザイナーたちの信念には心惹かれます

椅子の魅力は、豊かな個性と選ぶ難しさ

座布団のような形の椅子もあれば、曲線でつくる独特な形の椅子もあります。椅子の魅力はデザイナーの「個性」と、mashleyさんは熱く語ります。

椅子は人に一番近い家具です。人は1日のうち多くの時間を椅子で過ごしますから
自分に合った椅子を選ぶためには、値段やデザインだけでなく座り心地も重要です。選ぶのが難しいからこそ、椅子は面白いです

愛する椅子のために建てた家

たくさんの椅子椅子を集め始めた当時、mashleyさんは賃貸で暮らしていました。

所有する椅子が10脚を超えたとき、『愛着のある椅子たちを一番いい状態で飾りたい』と考えて、この家を建てることを決めました

今ではコレクションは22脚にまで増えました。どの椅子も暮らしに溶け込んでいて、mashleyさんに愛でられつつも大切に使われています。

2.コンセプトは「北欧、ミッドセンチュリー、アンティーク」

mashleyさんは、1950年代から1960年代につくられたミッドセンチュリーの家具に思い入れがあります。

今では当たり前のように使われているミッドセンチュリーデザインも、1950年代当時は画期的でした。『一般家庭に置くような、使いやすい家具をつくろう』という、デザイナーの熱い気持ちがイノベーションを起こしました

ミッドセンチュリーの家具を持つことで、当時のデザイナーたちの思いに触れられる…と話すmashleyさん。部屋を案内していただきながら、椅子への思いを聞きました。

ダイニングチェア

ダイニングチェア

テーブル周りの椅子:チャールズ&レイ・イームズ イームズチェア

ゾウの椅子:チャールズ&レイ・イームズ エレファント

私が好きなミッドセンチュリーと、夫が好きな北欧家具を組み合わせています。アメリカとデンマークという異なるテイストの家具ですが、つくられた年代が同じなのでよく合います

ひときわ目を引く象の形をした椅子は、最近加わった新入りです。

成形合板でつくられたエレファントの美しい曲線に、当時の技術の高さを感じます

リビングチェア

リビングの椅子

形が気に入っているこのデイベッド(ハンス・J・ウェグナー ゲタマ社GE258)を置きたいと思い、それに合わせて三角形のオットマンを選びました

ブルーのディベッド部屋のバランスを取るために、黄色のイームズチェアを置いて、黄色・グレー・青の3色に絞っています。

テラスのチェア

テラスの椅子

椅子:ヴェルナー・パントン パントンチェア

レトロな雰囲気がお気に入りのテラス。曲線的なオレンジの椅子がアクセントになっていました。

この椅子は、横から見たときの曲線がセクシーで美しいです。バランスが悪そうにも見えますが、座り心地がいいです

客間1のチェア

客間の椅子

椅子:ハンス・J・ウェグナー CH3ハイバックチェア

ヴィンテージな雰囲気のこの部屋には、賃貸に住んでいたときから使っている家具を置いています。ハイバックチェアの木枠はもともと白でしたが、部屋に合わせてダークな色に塗りました。

客間2のチェア

客間の椅子

アリの形をした椅子:アルネ・ヤコブセン アントチェア

アリの形をしたこの椅子は、デザインが気に入っています。かわいらしいアントチェアの雰囲気に合わせて、家具・インテリアを選んでいます

ベッド脇の椅子

椅子:チャールズ&レイ・イームズ イームズチェア

もう1つ、座面が布地でできている日本製のイームズチェアも置いています。

ベッドルームのチェア

寝室の椅子

椅子:アルネ・ヤコブセン セブンチェア

チーク材でできたセブンチェアを中心に、エレガントなベッドルームをつくりました。赤茶色の椅子にグリーンの壁を合わせ、時計のゴールドを差し色にしています。

楽器スペースのチェア

楽器スペースの椅子

椅子:アルネ・ヤコブセン セブンチェア

ご主人の要望でつくった楽器スペース。座り心地のよさを重視して、セブンチェアを置いています。

セブンチェアの背もたれの曲線は、人体構造を考慮してデザインされています。体にフィットするので、座って作業をするのに適した椅子です

書斎のチェア

書斎の椅子

椅子:チャールズ&レイ・イームズ イームズチェ

リビングの奥にある2畳ほどのスペースは、mashleyさんの書斎です。「思いきりミッドセンチュリーな雰囲気にした」という自慢の空間は、青や赤の原色をちりばめてポップな印象に仕上げています。窓際に飾られた小さな椅子のインテリアからも、mashleyさんの椅子への偏愛ぶりが伝わってきます。

イームズチェアの特徴は脚を付け替えられるところ。それぞれ脚の形を替えています

バスルーム、ランドリールームのチェア

バスルームに置いた椅子

椅子:チャールズ&レイ・イームズ DKR

バスルームに置かれたワイヤーチェア。こんなところにまで椅子が!と驚かされました。

ワイヤーチェアは、後ろが透けて見えるため空間を圧迫しません。狭い場所に置くには最適です。その日の気分によってバスルームとランドリールームのいずれかで使用しています。見た目は硬そうでも、座ってみると心地よい椅子です

玄関のチェア

玄関の椅子

椅子:柳宗理 バタフライスツール

バタフライスツールの曲線美に魅せられたmashleyさん。「玄関をデザインする前からこの椅子を置こうと決めていた」と笑顔で話してくれました。

玄関に靴が置いてあると、バタフライスツールが映えません。美しく見せるため、玄関横にシューズクロークをつくりました

屋外・作業小屋のチェア

屋上に置いた椅子

椅子:IKEA

ガーデニングやDIYのための作業小屋です。
小屋の外にある椅子は、何度も塗りなおしながら使い続けているのだとか。

座るというより、ガーデニング用の道具を置くスペースになっています

小屋に置いた椅子

椅子:チャールズ&レイ・イームズ イームズチェア

小屋の中はアトリエのような手づくり感のある空間にしたいと思い、大工さんに相談して、ご主人と一緒につくったそうです。この部屋の主役は、オレンジ色のイームズチェアです。

3.自ら修理したオレンジのイームズチェアが椅子愛の原点

イームズチェアオレンジ色のイームズチェアが、mashleyさんのお気に入り。最初に購入した椅子だそうです。

自ら修理をして手をかけた分、この椅子に対する思い入れも強くなりました

ベッドルームの椅子もう1つのお気に入りは、ベッドルームにあるチーク材のセブンチェア。座り心地のよさに衝撃を受けてから、忘れられない椅子になったそうです。

セブンチェアの座り心地を体感して、椅子を見た目だけで判断してはいけないと思うようになりました。見た目のよさだけでなく、機能性も満たす椅子が“よいデザイン”といえます

お気に入りの組み合わせはダイニング

ダイニングの椅子は、1脚ずつデザインが異なります。どうやって調和させたのか尋ねると、「椅子の写真を切り抜いたり、パワーポイントでイメージをつくったりしながら手探りで選びました」と当時の苦労を教えてくれました。

バラバラに購入した椅子をダイニングに置いて、しっくりきたときは感動しました。家具の生産国やデザインが違っても、デザインされた年代を合わせるとなじみやすいです

今後、欲しい椅子はペーパーナイフチェアとイージーチェア

22脚の椅子を持っているmashleyさんが次に欲しいのは、カイ・クリスチャンセンのペーパーナイフチェアとフィン・ユールのイージーチェアだそうです。

ペーパーナイフチェアは、体型に関わらず気持ちよさを感じられる椅子です。座面のやわらかさや肘掛けの角度が絶妙なバランスでつくられています。フィン・ユールのイージーチェアは、値段が高すぎてなかなか手が出せませんが、いつかは手に入れたいです

新しく購入する椅子は、客間にあるCH3の隣に置くと決めています。お気に入りの椅子に、ご主人と並んで座りながら映画を観たいと話してくれました。

4.椅子でライフスタイルと考え方が変わった!

ベストな状態で椅子を配置

お気に入りの椅子と素敵なインテリアに囲まれて暮らしているmashleyさんですが、以前は暮らしに無頓着だったようです。「椅子は座れたらいい」「部屋は寝られればいい」という、今とはかけ離れた考えを持っていました。

椅子を好きになったことで、お気に入りの椅子をベストな状態に保ちたいと考えるようになりました。椅子選びはもちろん、椅子を目立たせるための家具選びや、家具の配置にも気を配るようになりました

椅子を眺める至福のとき

mashleyさんの楽しみは、リビングにある黄色のロッキングチェアに座って、周辺の椅子を眺めること。お風呂上がりにロッキングチェアに揺られながら、お気に入りの椅子たちを慈しむように見回しています。
ブルーのディベッド

椅子がなかったら家も建てていないし、掃除もインテリアも好きにならなかったと思います。ブログやInstagramもやらなかったでしょう。椅子が私のライフスタイルや考え方のすべてを変えてくれました

◼️プロフィール
mashleyさん
Instagram:@mashley.1203
ライター
兵庫県
二人暮らし