ライフスタイル

壁を取り払って1LDKをワンフロアに。テイストミックスで自分らしさを表現|わがままな住まいvol.6

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自分らしさを盛り込んだリノベーション物件、オリジナリティが感じられる部屋など、こだわりの住まいに暮らす人々にインタビューする企画「わがままな住まい」。その人のライフスタイルとともに、家づくりから住まいに対する価値観まで伺います。

今回お話を伺ったのは、2年半前に中古マンションを購入し、フルリノベーションしたスタイリストの菅野有希子さん。“好き”を詰め込んだテイストミックスのインテリアで快適な暮らしを叶えています。

部屋だけではなく共有スペースの管理状態もチェック

ダイニングで寛ぐ様子

菅野さんが当初、購入を考えていたのは新築マンション。しかし、求める条件を満たす物件がなかなか見つからなかったため、中古物件をリノベーションするほうが選択肢は広がるかもと、考え方を変え、今のマンションに出合ったのだそう。購入当時は1LDKの間取りでしたが、キッチン前の個室の壁を取り払ってスライドドアに変更。光と風が部屋の隅々まで広がる開放的なワンフロアにアレンジしています。

このマンションは、高台、駅近、2階以上の部屋など、外せない条件がすべてそろっていました。ネット検索で見つけて不動産屋に問い合わせて、それから内見しました。部屋も2面採光で明るく、もともと海外の人向けの賃貸マンションだったためか、間取りも広く感じられたのを覚えています。マンション自体、築年数が当時15年と浅く、共有スペースもリノベーションされていて、中古マンションに多い古さや暗さがなく、特にエントランスを抜けると、中庭のような明るい共有スペースは気に入りました

ダイニングとリビング全体

部屋の状態だけではなく共有スペースの管理もチェックポイントにしていた菅野さん。実際、購入したマンションは、リノベーション物件の企画から設計、販売まで手がけるリビタが一棟丸ごとリノベーションした物件。耐震性や給排水管など目に見えない箇所もプロの目が入っているのが安心材料となり、購入に踏み切りました。

空間を印象づけるヘリンボーンの床とスライドドア

そして2018年4月。完成した住まいを、クラシカルモダンとインダストリアル、モロッカンを程よく掛け合わせたテイストミックスのインテリアにコーディネート。海外のインテリアを参考にしたそうですが、空間そのものは菅野さんのセンスが光るデザイン空間です。なかでもオーク材のヘリンボーンの床や、LDKと寝室を間仕切るスライドドアが、部屋の印象を決定づけています。

キッチンと寝室全体

壁をなくしたことで、部屋が広々として、日当たりも風通しも良くなりました。仕事上、自宅で撮影する機会もあるのですが、開閉できるスライドドアのおかげで、カメラを設置する自由度も上がりました。このドアは、ガラスじゃなくて透明アクリルで、格子は黒いアルミフレームなのですごく軽くて開け閉めしやすいんです。その時々で開けたり閉めたりしていますが、だいたい開けていることが多いですね。段差のないワンフロアなので、掃除はお掃除ロボットのルンバを活用しています

寝室からのキッチン全体

リノベーションは、リビタが提携している建築家の中でも、マンションのモデルルームを手がけたアトリエエツコの山田悦子さんを指名し、アイデアを出してもらいながら決めていったそうです。しかし、ベースになったのは菅野さんが集めた雑誌や洋書のイメージ写真や、画像検索アプリのPinterest。それらを単に共有し合うだけではなく、写真のどこがどう好きなのか、好きなポイントを山田さんが細かく確認してくれたことで、菅野さん自身も自分の好みが明確になっていったそうです。

床は海外のインテリアを見て、憧れていたヘリンボーンで決めていたのですが、自分でも気づかずに、選ぶ写真の多くに写っているディテールがありました。それが凹凸のある框扉と真鍮の取手です。スタイリストという仕事柄、どうしても物が増えてしまうので、収納スペースはできるだけ多くつくったのですが、キッチンの扉や壁面収納の扉など、目につく収納のほとんどは框扉と真鍮の取手で統一しています

ヘリンボーン床と真鍮の取手

アクセントウォールで“見せ場”をつくる

ヘリンボーンの床や框扉、真鍮の取っ手は、クラシカルな印象を与えるテイストですが、キッチンの扉カラーをライトグレーにし、壁面のクローゼットの扉も黒いアルミフレーム越しに視界に入るため、どこかモダンな雰囲気を感じさせます。この絶妙なバランスが菅野さんならではです。

ライトグレーのキッチンと黒いアルミフレーム

さらにキッチンはすっきりと“隠す収納”に。食器だけではなく電子レンジなどのキッチン家電も壁面収納の中に収めています。一方、キッチン横のダイニングスペースは見せることをテーマに演出しています。その要になっているのがキッチン扉よりもトーンの深いグレイッシュなアクセントウォールです。

ダイニングで寛ぐ菅野さん

ここの壁面は、収納にしようかとも思いましたが、模様替えが好きなので、季節や気分でアレンジできて、撮影にも便利なコーナーが欲しくてアクセントウォールにしました。ジュラルミンケースの上をディスプレイコーナーにして洋酒のボトルを飾っていますが、ダイニングテーブルよりも上の壁面が殺風景にならないように、高さのある観葉植物やフロアライトを置いて工夫しています。帽子を掛けているところに絵を飾るなど、壁の上部をどう見せるかを季節やその時々の気分でコーディネートして楽しんでいます
季節感が見えるディスプレイ

ダイニングテーブルの照明は、空間のアクセントとして映えるように真鍮6灯のシャンデリアを採用。デザイン重視で選んだそうですが、アクセントウォールとのコントラストで空間に奥行きが生まれています。ダイニングテーブルのテイストやサイズ感とも調和しています。

ダイニングテーブルはアクタスのスーホルムで買いました(現在、廃盤)。長さが180cmと素材感も存在感もあって、2年たって傷や汚れも含めて、いい味わいになってきました。このテーブルにあえて素材感の違う椅子を組み合わせているのですが、白い椅子はもともと赤だったのを自分で塗り替えて、自分好みの組み合わせにしました。失敗も失敗じゃないことにするアレンジ術です(笑)

お気に入りの椅子

4脚の中でも最近購入したマルセル・ブロイヤーの名作「チェスカチェア」のリプロダクト(左手前)が一番のお気に入り。どの椅子を置くかで雰囲気が変わるため、今後も気になる椅子を探し続けたいと楽しそうに語ります。

違うテイストを掛け合わせて、自分好みの空間を演出

菅野さんの住まいはワンフロアですが、キッチン、寝室、ダイニング、リビングとゆるやかにゾーニングしていることで、空間がすっきりとしています。どのスペースもお気に入りという菅野さんですが、夜のリラックスタイムには、ソファに座って海外ドラマや映画を観ることが多いと言います。

リビングから寝室のゆるやかなゾーニング

このソファは現行品なんですが、購入したアンティークショップで、鋲打ちやレザー加工を施してビンテージ風にアレンジしてもらいました。サイドテーブルにしているドラムは、高さ調節ができてテーブルとしても機能的です。モロッコでプフと呼ばれている山羊皮のクッションは、オットマンに、腰掛けにといろいろ使えて便利です

ベニ・ワレン風のコットンラグも、ルンバで掃除がしやすい薄地を選ぶなど、異素材や違うテイストを掛け合わせた遊び心あるミックススタイルは、機能面もしっかりと押さえてセレクトするのが菅野さん流です。

りんご箱を使った本箱兼ディスプレイ

テレビ台はりんご箱を使っていて、本棚兼インテリア雑貨を飾るスペースになっています。引っ越してきて変わったのがD I Yを始めたことで、紙製の収納ボックスをアイアンペイントで塗装したり、寝室のコーナーにドレッサーを作ったりしています。私は、ビンテージあり、手作りあり、デザイナーズ家具あり、いろんな素材感や新しい物、古い物を組み合わせることで、部屋全体に立体感や深みが生まれて、お金をかけるのとは違った暮らしの豊かさにつながる感じが好きですね。実際、そうしたほうが私自身とてもリラックスします

部屋は完成させないほう方がずっと楽しく暮らせる

見た目だけではなく、暮らしやすさや使い勝手にも配慮した空間づくりですが、それは訪れた人への心遣いとも連動しています。その一つが洗面室で、仕事で、プライベートで訪れる人が出入りする場所と捉えて、海外のカフェやホテルのパウダールームを参考にホテルライクな空間に仕上げています。

ホテルライクな丸鏡と真鍮ハンガー

丸い大きな鏡を取り入れたくて、TEORI ZERO(テオリ・ゼロ)の竹集成材の曲げ特性が生かされた壁掛けミラーを採用しています。洗面台下に収納スペースをつくらなかった代わりにプラスした、古材の棚板ともバランスよくまとまってお気に入りのコーナーになりました。タオルハンガーを真鍮にして、ディテールを部屋とリンクさせているのも、ひそかなポイントです

一方、人目に触れない浴室は機能性を重視して予算をかけず、収納扉もトイレや洗面、シューズクロークは既存のままにするなど、コストバランスも調整しており、キッチンなどの水回りの位置を大きく変えないプランにしたことで、コストを抑えることができたそう。

掃除もリフレッシュになると、こまめに部屋の片付けをしているそうで、収納もプラスチック製の収納ケースはあえて使わず、ワイン箱やカゴ、フェローズのバンカーズボックスを多用。収納グッズを自分好みにして、片付ける行為そのものが楽しくなるように工夫しています。

クローゼットの中も素敵な色合い

季節や気分に合わせた模様替えもよくするそうで、アクセントウォールやダイニングテーブル上のアレンジ、クッションカバーを替え、大きなダイニングテーブルの向きを変えることも少なくありません。

壁を花柄の壁紙にしてもいいですし、長期計画ですが漆喰を自分で塗ってみたいなと思っています。今までは住まいづくり、部屋づくりに完成があると思っていましたが、ここに住み始めてから、完成がなくてもいいと思えるようになりました。月日とともに味わい深くなる家具の横に、新しく買った家具を置いてもいいし、住みながら変えていく、変わっていくプロセスを楽しんでいきたいです

キッチンとダイニング全体
リノベーションしたワンフロアの住まいを、自分好みのテイストにアレンジし、“その時”の自分の直感や感性に合わせて手を加え、色や物を足したり、引いたり、空間を表現する。そうやって楽しむことが暮らしの豊かさにつながるということが、菅野さんの弾ける笑顔からも伝わってくる住まいでした。

■プロフィール
菅野有希子さん
テーブルコーディネーター/プロップスタイリスト
住まいのタイプ:マンション/築17年/約70m2㎡/1R
1人暮らし
東京都新宿区
HP: http://yukiko-sugano.mystrikingly.com

1983年生まれ。会社員を経て、2016年にスタイリストとして独立。雑誌や書籍、Webを中心に食からインテリアまでライフスタイル提案のスタイリングを幅広く手がける。撮影のスタイリング、撮影、商品開発、VMD、コラム、執筆、レッスン講師ほか、InstagramやYyouTtubeでも情報を発信中。