ライフスタイル

都会と地方の2拠点生活。電力を自給自足するオフグリッドな暮らしを実現!|Make a good Life! vol.4

目次

理想の暮らしとはどういうものでしょうか? その答えは、あなたが何に価値を見いだすかによって異なります。暮らしの多様性に着目し、一歩先のライフスタイルをさぐる企画「Make a good Life!」
自由な発想で自分らしいライフスタイルを実現する人たちを取材し、新しい価値観と選択肢をご紹介します。

第4回は池上陽貴さんの「2拠点生活」です。
池上さんが2拠点生活を始めたのは2年前。東京都と千葉県南房総に拠点を構えました。
「南房総にある家では、東京ではできないことができる」と話す池上さん。海まで自転車で数分という立地を生かし、趣味のサーフィンを満喫したり、自らの手でつくりあげたこだわりの“小屋”で料理にいそしんだり、自然エネルギーを利用したオフグリッドを実践したり…2拠点生活だからこそ実現できたバラエティに富んだ暮らしを楽しんでいます。

都会と地方、両方のいいところを存分に味わっている池上さんに、2拠点生活の魅力を語っていただきました。

2拠点生活とは

2拠点生活とは、その名の通り生活の拠点を2ケ所持ちながら生活するスタイルのことで、デュアルライフとも呼ばれています。
例えば、都会と地方の両方に生活の拠点を構えれば、平日は東京で仕事をし、週末には自然豊かな海辺で暮らすことも可能です。多様な働き方が浸透し始めた今、2拠点生活というライフスタイルは注目を集めています。

きっかけはサーフィンのために訪れた街で手にした偶然

二拠点生活のきっかけとなった趣味のサーフィン池上さんは5年前に、趣味のサーフィンを始めました。いい波にのるために、頻繁に足を運んでいたのが千葉県の南房総です。やがて池上さんは、時間帯によって変わる波の状態を把握するために、海の近くに住むことを考えるようになります。

土地を見つけられたのは、偶然です。懇意にしている飲食店で『土地を探している…』と話したところ、そこの店主に『いいところを知っているよ』と言われました。そのまま土地を見に行って、即決しました

愛用のサーフボード自身の性格を「思い立ったら即、行動に移すタイプ」と話す池上さん。土地を購入することにためらいはなかったそうです。

2拠点生活の魅力はコミュニティの多様性

月の半分程度を南房総で過ごす池上さん
池上さんは月の半分程度を、南房総で過ごしています。東京にいなければできない仕事は週の前半にまとめて、後半は南房総に行くなど、スケジュールを調整しながら2拠点生活を送っています。

東京の友人と南房総の友人の両方から刺激を受けています。2つのコミュニティを行き来するということは、自分の引き出しが増えること。多様なコミュニティが、生活を豊かにしてくれています

大自然の中でこだわりの料理を楽しむ

料理へのこだわりが強まった二拠点拠点

最近は、手間暇かけた料理を誰かと一緒に楽しむことが増えました。例えば、スパイスにこだわって煮込んだカレーや塊肉の丸焼き、野菜でだしをとったスープなどです
絶景を見ながら料理をしたり食事をしたりすると、味わったことのない開放感が得られます

そう語る優しい笑顔から、友人や家族と食卓を囲む時間を大事にしている様子が伝わってきます。2拠点生活のおかげで自分専用のキッチンができ、積極的に料理をするようになったと話してくれました。

長時間の移動も、バイクで快適に過ごす

二拠点生活の移動手段はバイク
池上さんは、東京から南房総までバイクで移動しています。移動時間は片道約90分、往復だと3時間程度になります。移動にかける時間を減らすために、週1回の移動で済むよう予定を組んでいるそうです。

移動手段には、もともと好きだったバイクを選びました。今では、子どもと一緒にバイクに乗って話す時間は特別なものになっています。いつもなら切り出しにくい話も、移動時間なら不思議とできてしまいます

家族で楽しむ自然豊かな暮らし
東京では難しい自然豊かな暮らしを親子で楽しめるのも、2拠点生活ならではの醍醐味です。

南房総では、東京では見かけない虫も出ます。怖がっている様子もありますが、そういった経験も含めて楽しんでくれているんじゃないでしょうか

用途別に3つのスペース。コンセプトは「自然に優しい暮らし」

南房総の拠点のひとつである小屋
南房総の拠点には、パーソナルスペースとなる小屋、コワーキングスペースとして使っているガレージ、現在建築中の住居となる自宅があります。

パーソナルスペースである小屋には、サーフィンの道具やキャンプグッズを置いているほか、キッチンやリビングスペースでくつろぐこともできます。ガレージは友人たちと共同購入したもので、各々が仕事をする場所になっているそう。複数の物件を所有できるのも、不動産の価格が低い地方に拠点を構える2拠点生活ならではの特徴です。

3つの建物に共通するコンセプトは「自然に優しい暮らし」とのことで、「建材に化学物質を使わない」や「家具はリユースを心がける」などのこだわりが見られます。

ライフスタイルに合わせて進化する小屋

ライフスタイルに合わせて進化する小屋

土地を購入して最初に手を付けたのは、パーソナルスペースとなる小屋でした。建築前に、敷地内のあらゆる場所にテントを張って、日の入り方や風の吹き方を見極めることから始めました。4~5ケ月かけて、ようやく小屋を建てる場所を決めたそうです。基礎工事と柱などは建築会社に発注しました。

外壁は自分でつくりましたが、週末の限られた時間で進めたので1年かかりました。実は、今もあちこちに手を加え続けています。2年以上、少しずつ作業し続けている状態です

小屋内の様子
キャンプテイストの小屋内
時間をかけてつくる分、自分のライフスタイルに合った唯一無二の家ができあがると池上さんは話します。小屋づくりの原点は、ベストな場所を探り当てたキャンプ生活。例えば、キッチンにキャンプ道具を持ち込み、簡易キッチンに見立て使い勝手を試してから、実際に施工しています。そのため、自分に合ったキッチンに仕上がっているいます。

人が集まる自宅

自宅には、親子でつくった空間も

自宅は建築会社に依頼しましたが、任せきりではなく、環境に配慮した古材を使用するなどの要望を取り入れてもらっています。また、全部とはいきませんが、お子さんとの共同作業で自ら仕上げたところもあります。

家を一緒につくることで、子どもとの絆も深めたいと思っています

家族や来客が楽しめる空間に

2階をプライベートスペースにして、1階をみんなで使えるスペースにしようかと考えています。広い庭や1階スペースでキャンプを楽しめたら面白いですね

友人と共同購入したガレージ

友人と共同購入したガレージ

もともと商店の倉庫だった建物を友人同士で購入し、みんなでDIYしたガレージ。自宅や小屋のある敷地から歩いて2~3分の場所にあります。
西洋漆喰の壁や棚をDIY

ガレージの壁には西洋漆喰を塗りました。壁に取り付けた棚は、大工さんが足場として使用していたものを譲り受けてDIYしたものです

小屋ではオフグリッド生活を満喫

オフグリッドを意識した二拠点生活
池上さんはサーフィンをしていると、海岸に打ち寄せるゴミに心を痛めることがあると言います。できる限り環境に配慮した生活をしたいとの思いから、小屋ではオフグリッド生活を実践していました。。
オフグリッドとは、電力を自給自足する生活スタイルのこと。電力会社に頼らず、太陽光や風力などの自然エネルギーを電力に変えて使用します。池上さんの場合は、小屋にソーラーパネルを取り付けて太陽光発電をしていました。

最初は必要な電力量の見当がつかなくて、苦労しました。冷蔵庫を入れたら電力が足りなくなって、蓄電用のバッテリーを追加したこともあります

災害にも強いオフグリッド生活

オフグリッドのメリットは災害に強いことです。台風で停電したとき、近所の方に電力をシェアできたのはよかったです

2拠点生活では「移動時間への配慮」と「住む地域の雰囲気を知ること」がポイント

場所の選定は現地の雰囲気を感じ取ることが重要
2拠点生活をするなら、拠点にする場所の選び方が重要です。池上さんが教えてくれた場所選びのポイントは2つ。1つ目は、2拠点間の移動時間。拠点を行き来する際、あまりにも離れていると定期的に通うことが難しくなります。
無理なく移動できる距離に候補地を見つけたら、実際に数日、その地域で過ごしてみるといいそうです。

2つ目は、地方の雰囲気。

地方によっては、独特の雰囲気があります。例えば、誰かに話したことを、次の日には町中の人が知っているというケースも。そういった人間関係を肌で感じてから、そこで暮らしていけるかどうかを判断するといいですよ

池上さんは、近隣の方とコミュニケーションを取るために、積極的に地域の“草刈り”に参加しています。仲良くなるには“祭り”や“田植え”など、町の人と共同作業ができる場に身を置くのがいいと教えてくれました。

2拠点生活にかかった費用は約500万円

自身の作業範囲を広げることがコストダウンに繋がる
池上さんが2拠点生活を実践するまでにかかった費用は、約500万。その内訳は、土地代が約50万円、家の骨組みが約250万円、そのほかDIYの道具類が約200万円程度とのことです。

自分で作業をすることでコストを下げています。建築会社や工務店にお願いするとしても、任せっぱなしにしないことです。また、こだわりを持って丁寧に仕上げた家なら、『住みたい』と感じる人も出てくるでしょう。誰かに貸したり売ったりすることも考えると、投資と捉えることもできます

2拠点生活に興味を持ったら、経験者の話を聞くことからスタート


2拠点生活を始めるにあたり、池上さんはすでに南房総に移住していた友人に話を聞きました。泊まりがけで家を訪ねたそうです。その友人とは今もご近所同士。困ったときには助け合えるいい友人関係が続いています。

今の時代、SNSなどで2拠点生活の情報を発信している人は少なくありません。そのなかの誰かに話を聞きにいけば、きっと親切に対応してくれると思います。僕や僕のまわりにいる友人も含めて、こういったライフスタイルを送る人は、誰かに習った経験があると思います。だからこそ、『自分も誰かに教えよう』という温かい気持ちでいられるのです

多様なライフスタイルと相性がいい2拠点生活


社会が変化するにつれ、リモートワークの浸透やフリーランスへの転向など、働き方が多様化しているのを感じます。東京での仕事を終えて2拠点目の家に戻れば、気の合う友人や家族とのにぎやかな暮らしが待っている。さらに、大自然の中で趣味のサーフィンを心ゆくまで楽しめる…池上さんの自由でアクティブな2拠点生活を取材して、新しい働き方と2拠点生活は相性がいいのかもしれないと思いました。

インターネットで手に入るノウハウはもちろん、経験者から得る生の情報には得難い価値があります。新しいライフスタイルを築くスタート地点は、自分から動いて経験者とのつながりを見つけることかもしれません。「興味を持ったら行動しよう」という池上さんからの熱いメッセージに、駆り立てられる気がしました。

◼️プロフィール
池上陽貴さん
Instagram:@takibiheads_pharuki
2拠点生活:2年
ウェブマーケター
ファミリー