「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。
DIY Mag公式クリエイターのchikoさん宅に取材に伺いました。
玄関に一歩入った途端に広がる世界感に圧倒されるchikoさんのお宅。驚くのはそのスケール感です。
ウッドデッキやアトリエなど、もはやDIYの枠では収まりきらない大胆なリノベーションまで手掛けてしまうchikoさん。
実は、インスタのフォロワー数3万人を超える人気DIYクリエーターとして活躍している方。『WAGON WORKS』としてDIY作品を創作し、現在は市とコラボしてDIYを活用した空き家対策にも取り組んでいます。
また、DIY PEOPLE vol.8で紹介しているNegoさん同様、「つるじょ」の一員でもあります。
住み始めて18年間、自分のエッセンスを加えアップデートし続けた、ため息もののお宅におじゃましました。
縁側のあった和室がビンテージ感漂うアトリエに大変身!
玄関を入って右手にあるアトリエ。オールドアメリカンな雰囲気が漂いますが、実はここ元は和室でした。写真に写っている柱の右側は縁側だった場所。床の間や収納の壁を取り払い、縁側までを一続きのスペースにしています。今ではこの場所からさまざまなDIYアイデアが生まれています。
絵に描いたようなアトリエの一角。音の出る作業をここで行うため、元々あった壁の上に断熱材と防音材を入れて板を打ち付け、二重の造りにしています。
壁に取り付けた棚や箱などは、余った木材や100円ショップで買ったものを組み合わせてほとんどご自身で作ったものだそう。
DIYのヒントは古いアメリカ映画から
”男前インテリア”の先駆け的存在ともいえるchikoさん。重厚感のある家具やアイアンを使ったインテリアが好きで、古いアメリカ映画の雰囲気を出せないかな、と思いDIYをスタートしました。
細かく仕切って無駄なく収納する技はお手本になります。
押入れだった場所は扉を取り外し、端材や道具をストックする収納スペースに。「ちょっと物足りないかなと思って」100円ショップの芝生調シートを敷いたと言います。下段には、出し入れしやすいようにキャスターを取り付けた木製の収納ボックスを並べています。こちらももちろんDIY。
譲り受けたものも自分好みにリメイク
譲り受けた机に解体した家の床材を加工した天板を自作してリメイク。自分好みにペイントしてリバーシブルで使えるようにしています。
ご近所の方から頂いたテーブルを見事にアレンジしています。
輸入壁紙専門店「WALPA」で購入した壁紙をテーブルの天板に張り、アトリエの雰囲気に合わせたテイストに統一。純和風だった一枚板の無垢テーブルが、オールドアメリカン調に。
資材調達、設計・施工まで手掛けたウッドデッキはお気に入りの場所
10年ほど前に手掛けたというウッドデッキ。施工会社で見積もりをとったところ約40万円と予算オーバーだったことから、インターネットでレッドシダーを購入しDIYすることに。chikoさんご自身が設計し、大工さんとコンクリートを流し込む基礎の部分から一緒に作り上げていったそう。水平を測るのが大変だったものの「素人設計だったんですけど嘘みたいにピタッとはまって、こんな気持ちいいことはない! と思いました(笑)」とchikoさん。
子どもが小さいうちは、ビニールプールを出したり、バーベキューをするスペースとして活用。今はご自身で作ったDIY作品を撮影したり、ペイントをする場所として使っています。
優しい木漏れ日がふりそそぐ窓辺にはお気に入りの小物を飾っています。
ウッドデッキに造られた窓辺の一角。解体された約築100年の古民家から譲り受けた窓枠に合わせ、板を張っていきました。蚤の市などで見つけたアンティーク調の小物などを並べて、シャビーな雰囲気に仕上げています。
chikoさんテイスト満載の玄関
玄関を入ってすぐには、懐かしい雰囲気が漂うオブジェたちが並んでいます。使わなくなった蒸し器をリメイクしたオブジェや、ご主人の実家からもらったという古いそろばんがアンティークな雰囲気作りに一役買っています。
chikoさんが活動する際のブランド『WAGON WORKS』。
レンガのように見える壁、実は発砲スチロール。レンガ調の白い発泡スチロールにchikoさんがペイントしたものです。
「一色だけでなく何色も塗り重ねて、たたいて色を塗りこむことでレンガの風合いがでるんです」とchikoさん。味気ない壁もアイデアひとつでリズム感が生まれます。
※レンガ調発泡スチロールはホームセンターでも販売されています。
何度も大胆なリメイクを施してきたキッチン
「以前は壁を黒くペイントしていたんですけど、写真に撮ってみたらちょっと暗いなぁと思って」と語るキッチンは、全体を白くペイントしなおしました。開口上部は、黒だった壁にステンシルで白を重ね、ブロックに見えるようペイントしています。
元々はカウンターがありましたが「使わないし邪魔だなと思って」切り離してしまったそう。
「中古住宅なので大胆な加工も躊躇なくできます。失敗しても色を塗ったり、穴には紙粘土を詰めたりと、修正はいくらでもできますから」
窓のサンや、キッチンの格子など、塗装した後でやすりをかけて剥がしたり、わざと塗り残したり、ラフな仕上げがchikoさん流。
友人から結婚祝いにもらったというカップボード。上下2つに切断し、背を高くして食器棚としてリメイクしています。
「DIYで部屋を変化させていく中で、真っ白なカップボードは雰囲気に合わなくなってしまって。でも友人からもらった大切なものなので、リメイクして使いたかったんです」
引き出しには壁紙を張って、キッチン全体の雰囲気と調和をとっています。
DIYを始めたきっかけは「冬の寒さ」
最初にDIYを手掛けたのはリビングだったそう。開放的で住みやすい家でしたが、冬の寒さがネックでした。
「住み始めて二年ほど寒い冬を過ごしたんですけれど、もう耐えられなくなって。別の家を探そうと家のことを調べるうちに、自分たちの家には断熱材が入っていないということを知ったんです」
予算がなかったこともあり、自分でなんとかできないかと床下にもぐって断熱材を入れたのがchikoさんのDIY生活のスタートでした。
壁に描かれたステンシルの文字がインパクト大!
窓枠もchikoさんが製作したもの。リビングの雰囲気に合うようにペイントし、アルミサッシの上から設置しています。
漆喰で塗った白い壁にはステンシルで大きな文字が描かれています。DIYの仕事でモデルルームの改装を依頼され、ステンシルを使ったリメイクを施すことになり、自宅で予習をしたのがこの「FORTUNE」の文字。「勢いでやってみたものの、うちには大きくてインパクトありすぎかも」とchikoさんは笑います。
漆喰の上からグレーにペイント。リビングが引き締まった印象に
白の漆喰の上にグレーのペイントを施して、コンクリートっぽく仕上げ。スピーカーを収納できるちょうどいいサイズのテレビボードがなかったため、自分で作成。テレビボードの引き出しや扉の中は、100円ショップのカゴを入れて、子どもが使うゲームの周辺機器やDVDなどを収納しています。
スタイリッシュなリビング空間。これだけリビングの印象が変わると、家族も驚きなのでは?と思い聞いてみると、意外にも家族はみんな無関心なのだとか。
「毎日何かしら変わっていますし、物心ついたときからDIYが普通になっているからですかね。娘には『またゴミ作って』って言われます(笑)」
家が変化していくことが普通で、慣れてしまっているのかもしれませんね。
chikoさんのお宅すべてに統一感があるのは、目に付く小物類にまで自分好みに手を加えているから。雑誌や小説にはクラフト紙や壁紙の余りを使ったお手製のブックカバーを付けて目隠ししています。
小さい空間に技が詰まったトイレ
写真 右上:トイレ、右下:洗面スペースに作られたニッチ
chikoさんによると「面積が狭いトイレはDIYを試すのにちょうどいい場所」。トイレが壊れて交換する際、いい機会だからと床を自分で張りなおし。
壁面にはニッチを作り、小物を飾れるスペースに。ニッチは下書きをしてジグゾーで壁をくり抜き、合板の箱をはめ込んで、漆喰で仕上げています。
「壁紙だと粗が出てしまうけれど、漆喰ならごまかせるんです。コーナーも綺麗に仕上がるのでおすすめです」
※ニッチを開ける際は、構造材に注意が必要。筋交いは避けて柱や胴縁があれば、そこに箱を固定します。
”失敗も味”と言えるところがDIYのだいご味
華奢なのに力仕事もこなすchikoさん。見た目だけでなくDIYの方法まで大胆なchikoさんのアイデアはSNS上で憧れの的。
「寸法が足りなくなって付け足した木材や、はみ出したペイントなど、人から見たら失敗に見えることでも、それが”味”だといえるところがDIYの魅力。職人のようにきっちりとはできない私にはぴったりかも」と話してくれました。
塗料
椅子のリメイクに凝っていた時期もあるというchikoさん。エイジング加工するために、座面をアスファルトにこすりつけて、塗料を染み込ませやすくしたり、2、3種類の塗料とオイルと使って深みを出すなど、塗装にはこだわりが見えます。
椅子のリメイク第1号。布張りだった座面は外し、ペイントした木材に変更しました。
chikoさんのお気に入りは『Graffiti Paint』(フロア用、壁用)。二度塗りを推奨していますが一度でも発色がよく、乾くのが早いので次の工程に移りやすいのだとか。
木目を生かすステイン塗料は『ワトコオイル』を使用しています。植物性塗料でサラッとした液状なので使いやすいのが特長。『オスモカラー』は、ドロッとしていて撥水効果があるのでキッチン、トイレなど水回りに使うのがおすすめです。
材料・道具
ウッドデッキなど大きくてまとまった数が必要なものはネットで購入。DIY作品や家具のリメイクなどに使う材料は、だいたいカーマやカインズホームなどのホームセンターで買っています。
電動ドライバー、インパクトドライバーは欠かせない道具。『ブラック・アンド・デッカー』と『マキタ』を愛用しています。
愛用品が整然と並んでいるデスク。
100均のミニほうきも革をまいてステンシルをすることで個性的に仕上げています。
DIY Mag編集部の感想
小柄で華奢なのに、やっていることは大胆! ご自分のことを大雑把だと話すchikoさんですが、あえての塗り残しやエイジングの方法、ビスのサビを表現するなど、ディテールへのこだわりを感じました。
どこをとってもオシャレで、センスのいい人にしかできないことなのでは?と思いましたが、お話を伺ううち、chikoさんは研究熱心なのだということに気が付きました。普通の人ならプロ任せにしてしまうようなことも、自分で調べ、できることを積み重ねていく。それがこの素敵な家を作り上げたのだと。レンガの色を再現したり、差し色を考えたり、絵を描く感覚で家を上書きしているのもchikoさんならではかもしれません。
失敗を恐れてしまいがちですが、「失敗も味」というchikoさんの言葉を励みに、大胆なDIYにもチャレンジしてみたいと思わせてくれる取材でした。
■概要
・お名前:chikoさん
・ブログ:STUDIO IN THE AFTERNOON☆100均簡単リメイクとお家DIY☆~WAGON WORKSブログ~
・家族形態:夫婦・子ども2人
・住まい形態:中古一戸建て
・間取り:4LDK
・DIYした場所:すべて
・かかった期間:16年
・かかった費用:不明(ウッドデッキの木材は約10万円)
文:まつおまいこ/写真:田川翔一