ライフスタイル

大嫌いだった家を大好きにしたい。住みたい家はDIYで作る|DIY PEOPLE vol.8

目次

「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。

住宅街の一角にある一軒家。ひと際目を引く、アンティーク調に塗られた玄関のドア。ひと目見ただけで、「他とは何かが違う」と期待感が膨らみます。「ピンポーン」とチャイムを鳴らすと、にっこりとした笑顔でNegoさんが出迎えてくれました。「玄関は、ニューヨークのコンテナをイメージして塗ったんですよ」と、楽しそうに教えてくれました。

ニューヨークのコンテナをイメージした玄関

築25年の一戸建てを全面DIY!

Negoさんは、ご主人と高校1年生の息子さん、中学2年生の娘さん、小学4年生の娘さんと5人で和歌山県に暮らしています。リビングにおじゃますると、窓から差し込む明るい日射し。白と木目を基調とした部屋に、シャープなブラックが光ります。そして、ところどころに配置されたグリーンが、おしゃれなカフェのよう。センスあふれるNegoさんのお住まいですが、実は築25年あまりの使い込まれた一戸建て。でも、リビングとキッチンを拝見する限り、その面影はまったくありません。

グリーンが多いリビング玄関DIY

DIYをはじめたきっかけ

元々、ご主人の実家だったというNegoさんのお住まい。今からは想像ができませんが、お嫁入りしてきた時の印象は「暗くて狭い」だったと言います。思い描いていた新婚生活とはほど遠く、家をどうしても好きになることができなかったそう。そんな時に出会ったのが、ごく普通の一軒家をDIYで自分好みに変身させた吉原理映さんの本でした。

「うちと間取りがよく似ていて、こんなふうにできるんだーって思いました。大嫌いな家をとにかく大好きにしたい。ただその気持ちだけで、見よう見まねでDIYを始めたのです」

まずは、リビングとキッチン。自分が一番長い時間を過ごす部屋のDIYに取りかかりました。リビングの壁にはベニヤ板を張り、その上を白く塗ります。キッチンのシンク下の扉にも色を塗りました。そうすると部屋の雰囲気が見違えるように大変身! このことをきっかけに、NegoさんのDIY生活が始まります。

negoさん邸のリビング壁面の棚や遊び心あふれるオブジェ、ハンギングした多肉植物など、negoさんのDIYでリズム感のあるリビングが完成した。

“いいな”と思ったら、まずは“やってみる!”

現在は、英文字やアイアン、ブラックを程よく取り入れたメンズライクな部屋が好みだそう。ナチュラルやポップな時期を経て、今に落ち着いているのだとか。お手本にしている人がいるわけではなく、本やテレビなどを見ていいなと思ったら作ってみる。とにかく“やってみる”ことがNegoさん流。そこで気が付くこともたくさんあると言います。

「リビングの壁にベニヤ板を張っていますが、最初は張らずに直接棚を取り付けていました。すると、棚が突然落ちてきたのです。家の構造上、壁の中はスカスカなんですよね。それは天井も一緒。照明がどんと落ちてきたこともありました。それでベニヤ板を張ったり、天井に木材を取り付けたりして補強する技を覚えました」

お気に入りは、グリーンに彩られたリビングの窓際

negoさん邸 窓辺のDIYさまざまな形のグリーンが明るい窓辺に表情を添えています。
negoさん邸のサボテン 窓辺は植物たちの特等席。

どこをとってもうっとりするほど素敵なお住まいですが、お気に入りの場所を伺うとリビングの窓辺だと教えてくれました。カーテンがあまり好きではないので考えた末の木枠だそうですが、光が程よく入り、何よりもグリーンが映える部屋が完成しました。

大好きなグリーンを飾るのに思うような鉢がなかったので、木材を切って鉢を作ったりNegoさんがデザインしたステンシルで描いたり、オリジナルにもこだわっています。
negoさん手作りのステンシル鉢空き缶がペイントとステンシルでオリジナルの鉢に変身!

苦手な収納もDIYで上手にディスプレイ

大好きな雑貨や洋服、靴は壁面に飾って収納しています。「収納に扉があると、整理整頓できない性格なんです」とNegoさんは笑いますが、お気に入りのものが目の前にある暮らしは、きっと豊かなものに違いありません。
nego邸の見せる収納コンクリートのようなフェイクの壁紙に、アイアンのフレームを設置して「見せる収納」に。

DIYを子育てにも生かす

Negoさんの“大好き”が詰まったキッチンとリビングを後にし、次は小学4年生の娘さんの部屋におじゃましました。ニューヨーク・ブルックリンをイメージして作られた部屋は、子ども部屋とは思えないほどおしゃれ! ルームファクトリーのシックな壁紙と、Negoさんお手製の机や棚、黒板が見事に調和しています。
nego邸の子供部屋子ども部屋とは思えないスタイリッシュな空間です。そして、この部屋はただおしゃれなだけでなく、機能性も兼ね備えています。
部屋のテーマは、「子どもの困ったクセをDIYで解決」。部屋の真ん中に収納棚を置き、左は勉強の部屋、右は遊びの部屋と用途を分けています。棚のボックスには数字が書かれ、それぞれの部屋から取り出すことができます。

「使ったものはそれぞれのボックスに片付ける約束なのですが、先日娘が探しものをしていて、『勉強の部屋、遊びの部屋、どっちにある?』と言われたことがあったのです。ああ、それぞれの部屋の用途をきちんと分かってくれていたんだと嬉しくなりました」
nego邸の約束ごとのボード小学4年生の娘さんの“勉強の部屋”に置かれたボード。左の部屋の黒板に書かれた「やくそくごと」を守れたら、右の部屋で遊んでいいというシステムもNegoさんが考えたもの。
こんな部屋なら勉強もはかどりそう!子育て中の人なら真似したいアイデアです。

気楽に好きなように、楽しんで

nego邸壁や棚など大掛かりなDIYも多いNegoさんのお住まいですが、そのすべてをひとりで行っています。
ご家族の反応を聞きすると、「家族は協力してくれることもないけど反対もないので気楽にやっています。でも時々、主人や娘が褒めてくれると『やったー』って心の中でガッツポーズしますね(笑)」とのことでした。
nego邸玄関の壁紙玄関の壁面もDIY。漆喰を塗り、煉瓦のような造作を施し、雰囲気のある空間を演出しています。
ステンシル作業中玄関の小物置き玄関の壁をくり抜いて作った小物置き。最初は、壁を剥いだら構造材が出てきたため、それも取り除こうとしてしまい、ご主人に慌ててとめられたそう。
玄関の床アンティークの板とアンティーク調に塗った板が並ぶ玄関の床。どちらか分からないほどの見事なできばえです。
天井から吊る下がる手作り雑貨小物は雑貨屋さん、アンティークショップ、100円ショップで購入したものを上手に組み合わせて飾っています。
アクセサリーフック端材を利用して作ったアクセサリーコーナー。洋服も靴もアクセサリーもしまいこまないで飾っています。

失敗した!と思わなければ、失敗じゃない

大嫌いな家を大好きにしたいという思いで、知識がまったくないままコツコツとDIYに励んできたNegoさん。さぞや失敗や苦労もたくさんありそうなのですが、お聞きすると「特になし!」と明快な答えが返ってきました。

「失敗しても直せばいい、隠せばいい。そうすると失敗ではなくなります。失敗したらどうしようとか、どうにもならないと思ってしまったらそれは失敗。ガチガチにしてしまうと次がやりたくなくなってしまう。これでいいんや〜って思って作ることも大切なんです」
手作りipad入れ子ども部屋に作ったiPadケース。失敗を恐れずにチャレンジして完成したものは、ちょっとくらい不格好でも愛着はひとしお。何よりも自分で作り上げた喜びと達成感こそがDIYの醍醐味なのでしょう。

また、進化していけることもDIYの楽しみです。例えばNegoさん家の玄関の床は、元々は茶色でした。上から白く塗って、今は板を張っています。変えたいと思ったらすぐにできる。自分で作っていれば修正もすぐにできることもDIYの魅力です。

DIYで手放せない道具は?

ブラックアンドデッカーのマルチツールプラス最後にNegoさんが愛用している道具についてお聞きしました。
最初は、のこぎりと電動ドリルドライバーを購入したそうです。電動のこぎりも持っていますが、動く刃物がこわくてほとんど活用していないというかわいらしい一面もお聞きしました。そして、現在の相棒は『ブラック・アンド・デッカー』のマルチツールプラス。バッテリーが長持ちするところがお気に入りなのだとか。
_v0a1003negoさんリビングにて古くても狭くても、自分らしい暮らしをしたい。専門的な知識や技術がなくても、挑戦する気持ちを大切にしたNegoさんのお住まいには、DIYを通して日々の暮らしを楽しむアイデアがいっぱい詰まっていました。
おしゃれなDIY部屋

DIY Mag編集部の感想

壁や棚を作るDIYは誰でも挑戦しやすいけれど、窓や鉢にステンシルを張ったり、部屋にグリーンや雑貨を飾ったり、そのセンスとバランスは誰でも持ち合わせているわけでないもの。組み合わせ方や取り入れ方がNegoさんならではのものだと感じた取材でした。そして、細かいことは気にせずにまずは挑戦! これも大切なことですね。

■概要
・お名前:Negoさん
・Instagram:@chihomi_l
・家族形態:夫婦・子ども3人
・住まい形態:中古一戸建て
・間取り:4LDK
・DIYした場所:キッチン・リビングダイニングルーム・子ども部屋
・かかった期間:約13年
・かかった費用:3〜40万円

文:杉江さおり/写真撮影:藤村のぞみ