自分らしさを盛り込んだリノベーション物件、オリジナリティが感じられる部屋など、こだわりの住まいに暮らす人々にインタビューする企画「わがままな住まい」。その人のライフスタイルとともに、家づくりから住まいに対する価値観まで伺います。
今回お話を伺ったのは、2年半前に中古マンションを購入し、フルリノベーションしたスタイリストの菅野有希子さん。“好き”を詰め込んだテイストミックスのインテリアで快適な暮らしを叶えています。
部屋だけではなく共有スペースの管理状態もチェック
菅野さんが当初、購入を考えていたのは新築マンション。しかし、求める条件を満たす物件がなかなか見つからなかったため、中古物件をリノベーションするほうが選択肢は広がるかもと、考え方を変え、今のマンションに出合ったのだそう。購入当時は1LDKの間取りでしたが、キッチン前の個室の壁を取り払ってスライドドアに変更。光と風が部屋の隅々まで広がる開放的なワンフロアにアレンジしています。
部屋の状態だけではなく共有スペースの管理もチェックポイントにしていた菅野さん。実際、購入したマンションは、リノベーション物件の企画から設計、販売まで手がけるリビタが一棟丸ごとリノベーションした物件。耐震性や給排水管など目に見えない箇所もプロの目が入っているのが安心材料となり、購入に踏み切りました。
空間を印象づけるヘリンボーンの床とスライドドア
そして2018年4月。完成した住まいを、クラシカルモダンとインダストリアル、モロッカンを程よく掛け合わせたテイストミックスのインテリアにコーディネート。海外のインテリアを参考にしたそうですが、空間そのものは菅野さんのセンスが光るデザイン空間です。なかでもオーク材のヘリンボーンの床や、LDKと寝室を間仕切るスライドドアが、部屋の印象を決定づけています。
リノベーションは、リビタが提携している建築家の中でも、マンションのモデルルームを手がけたアトリエエツコの山田悦子さんを指名し、アイデアを出してもらいながら決めていったそうです。しかし、ベースになったのは菅野さんが集めた雑誌や洋書のイメージ写真や、画像検索アプリのPinterest。それらを単に共有し合うだけではなく、写真のどこがどう好きなのか、好きなポイントを山田さんが細かく確認してくれたことで、菅野さん自身も自分の好みが明確になっていったそうです。
アクセントウォールで“見せ場”をつくる
ヘリンボーンの床や框扉、真鍮の取っ手は、クラシカルな印象を与えるテイストですが、キッチンの扉カラーをライトグレーにし、壁面のクローゼットの扉も黒いアルミフレーム越しに視界に入るため、どこかモダンな雰囲気を感じさせます。この絶妙なバランスが菅野さんならではです。
さらにキッチンはすっきりと“隠す収納”に。食器だけではなく電子レンジなどのキッチン家電も壁面収納の中に収めています。一方、キッチン横のダイニングスペースは見せることをテーマに演出しています。その要になっているのがキッチン扉よりもトーンの深いグレイッシュなアクセントウォールです。
ダイニングテーブルの照明は、空間のアクセントとして映えるように真鍮6灯のシャンデリアを採用。デザイン重視で選んだそうですが、アクセントウォールとのコントラストで空間に奥行きが生まれています。ダイニングテーブルのテイストやサイズ感とも調和しています。
4脚の中でも最近購入したマルセル・ブロイヤーの名作「チェスカチェア」のリプロダクト(左手前)が一番のお気に入り。どの椅子を置くかで雰囲気が変わるため、今後も気になる椅子を探し続けたいと楽しそうに語ります。
違うテイストを掛け合わせて、自分好みの空間を演出
菅野さんの住まいはワンフロアですが、キッチン、寝室、ダイニング、リビングとゆるやかにゾーニングしていることで、空間がすっきりとしています。どのスペースもお気に入りという菅野さんですが、夜のリラックスタイムには、ソファに座って海外ドラマや映画を観ることが多いと言います。
ベニ・ワレン風のコットンラグも、ルンバで掃除がしやすい薄地を選ぶなど、異素材や違うテイストを掛け合わせた遊び心あるミックススタイルは、機能面もしっかりと押さえてセレクトするのが菅野さん流です。
部屋は完成させないほう方がずっと楽しく暮らせる
見た目だけではなく、暮らしやすさや使い勝手にも配慮した空間づくりですが、それは訪れた人への心遣いとも連動しています。その一つが洗面室で、仕事で、プライベートで訪れる人が出入りする場所と捉えて、海外のカフェやホテルのパウダールームを参考にホテルライクな空間に仕上げています。
一方、人目に触れない浴室は機能性を重視して予算をかけず、収納扉もトイレや洗面、シューズクロークは既存のままにするなど、コストバランスも調整しており、キッチンなどの水回りの位置を大きく変えないプランにしたことで、コストを抑えることができたそう。
掃除もリフレッシュになると、こまめに部屋の片付けをしているそうで、収納もプラスチック製の収納ケースはあえて使わず、ワイン箱やカゴ、フェローズのバンカーズボックスを多用。収納グッズを自分好みにして、片付ける行為そのものが楽しくなるように工夫しています。
季節や気分に合わせた模様替えもよくするそうで、アクセントウォールやダイニングテーブル上のアレンジ、クッションカバーを替え、大きなダイニングテーブルの向きを変えることも少なくありません。
リノベーションしたワンフロアの住まいを、自分好みのテイストにアレンジし、“その時”の自分の直感や感性に合わせて手を加え、色や物を足したり、引いたり、空間を表現する。そうやって楽しむことが暮らしの豊かさにつながるということが、菅野さんの弾ける笑顔からも伝わってくる住まいでした。
■プロフィール
菅野有希子さん
テーブルコーディネーター/プロップスタイリスト
住まいのタイプ:マンション/築17年/約70m2㎡/1R
1人暮らし
東京都新宿区
HP: http://yukiko-sugano.mystrikingly.com
1983年生まれ。会社員を経て、2016年にスタイリストとして独立。雑誌や書籍、Webを中心に食からインテリアまでライフスタイル提案のスタイリングを幅広く手がける。撮影のスタイリング、撮影、商品開発、VMD、コラム、執筆、レッスン講師ほか、InstagramやYyouTtubeでも情報を発信中。