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DIY経験ゼロで自宅を大改造! 「狭い、暗い、寒い」を自力で解決|DIY PEOPLE Vol.15

目次

「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。

DIY未経験からはじまったリビングづくり

今回訪れたのは、スカイツリーが一望できる東京都墨田区で暮らす川名恵介さんのお住まいです。築約25年の3階建て木造住宅で、引越してきたのは今から6年前。6Kの間取りを4LDKにセルフリノベーションして、明るく開放的な空間になっています。

驚くのは取り掛かった当初、川名さんはDIY未経験だったこと。にもかかわらず、壁、床、天井の解体という大規模工事に挑戦し、好きな素材や色使いで空間を一新。断熱性や採光性も格段にアップさせています。その完成度の高さから、自らのDIY体験をまとめたブログやYouTubeが話題です。そんな川名さんのDIYの秘訣や実際の住み心地について聞いてみました。

DIY初心者で、いきなり天井と壁を壊すところからスタート

仕切り壁も白い塗装ですっきりとした印象に

家族3人暮らしの川名さんはもともと賃貸マンションに住んでいました。今の家は祖父母の住まいで、お祖母様が介護施設に入って空き家になってしまうため、移り住むことにしたそうです。

20平米の1階のリビングダイニングも、元は和室と洋室の二間で区切られていて狭く、日中でも電気をつけないと暗くて生活動線が悪いこともわかっていました。でも実質家賃がかからないのが魅力でしたし、以前から興味のあったDIYでリノベーションしてみるチャンスとも考えました

笑顔で語る川名さんですが、当時はwebディレクターをしており、DIYとはまったく無縁。釣りのルアーを手づくりしたことはあったそうですが、棚や収納小物などのプチDIYも未経験の状態です。にもかかわらず、いきなり戸建てのセルフリノベーションにとりかかります。しかし決して勢いまかせで始めたのではありません。それは床材や照明の配置を見ても分かります。

床材は無垢のオーク材、照明はマリンランプを使用

素材や内装は具体的にイメージしてから計画を立て、工具の購入をしました。DIYで人件費がかからない分床材にはお金をかけて、幅150mmの幅広の無垢のオーク材を選んでいます。20平米のリビングダイニングで約10万円です。マリンランプは光の陰影が好きで、リノベ―ション前にどこに取り付けるか考えて、電気の配線工事を依頼する時に指定しています

何もかも自分でやるのではなく、プロに任せるところは任せるという考えで、電気工事やライティングレールの設置は業者に依頼しています。さらに“初期投資”としてDIYのプロにもアドバイスを求めるなど万全の体勢です。

1階の天井と壁は友人を交えて2、3日で解体しましたが、みんな素人なのでプロの目が必要です。最初の頃は『HandiHouse』(ハンディハウス)の方に計4回来てもらって、工具の使い方から耐震性などの家の構造についてもしっかり教えてもらいました

「ふかし壁」を自作して飛躍したDIYスキルと自信

リビングダイニングの内装は、奥様が里帰り出産しているタイミングに合わせてDIYしたそうで、延べ4人の友人が助っ人に来てくれたと言います。

天井材を剥がすことで、リビングが開放的な空間に

天井材を剥がして高さ約3m近くになった時は、テンションが上がりましたね。でも壊すよりもつくる方が大変。既存のフローリングと畳を剥がして、畳がない分できた段差を揃えてワンフロアにして、和室の砂壁、洋室のビニールクロス壁の上からそれぞれ建築用のパテ、白ペンキの順に塗って素材感を統一しました。
一番大変だったのが天井です。天井材を剥がすと、天井裏の壁に隙間があって、それを埋めてから塗装しなければなりません。天井の塗装は、壁同様ムラが出ないように2度塗りしたのですが、かなり姿勢がキツくて、1人でやっていたら心が折れていたかもしれません

そう言って苦笑しますが、その後、川名さんは電気の配線や配管を目隠しする「ふかし壁」(せり出した壁)を、たった一人でつくり上げます。
ふかし壁もDIYで制作

コの字型に木枠を組んで、その周りに石膏ボードを貼り付けて作るのですが、水平、垂直ラインも満足のいく仕上がりで、この壁づくりの経験でDIYの腕が上がった感じがしましたし、自信もつきました

ギャラリーのような空間にしたいとライティングにもひと工夫。色の見え方が自然光に照らされた時に近いようにとRA値95(自然光はRA値100)のLED照明を採用しており、「ご飯が美味しく見える」とご家族からも好評です。

「室温」と「収納」を改善して快適空間を実現

窓に施した断熱機能もDIY

デザイン性だけではなく、川名さんは住まいの機能性アップにも果敢に挑戦しています。夏の熱気、冬の冷気対策として、アルミサッシの窓に木枠の内窓をプラス。それも折れ戸仕様で開閉スペースに場所を取らない細やかな設計です。他にも階段下にロールスクリーンを、天井にはシーリングファンを設置して、1階の冷暖房効率を高める工夫が随所に施されています。

また、収納力アップにも着手。なかでも2年前につくった窓下の収納棚は、川名さんの力作です。

収納力も充実した窓下収納棚

お子様のミニカーやおもちゃもスッキリ

可動棚になるように棚の内側にはダボ穴を施し、左手にある8段の引き出しは、スライドしやすいように両側に1cm角のスギ材を渡して、子どもでも取り外しがしやすいようにと、材の先端を「く」の字に加工するきめ細かさです。

お子様のおもちゃ収納棚もDIYで

収納棚はおもちゃ入れに重宝しています。引き出しは、そのままおもちゃ箱になるサイズ感でつくりました。息子は来年小学校に上がるので、棚の位置を変えればランドセル置き場や本棚としても使えそうです

階段側には吊り下げ式のハンガーラックを取り付けて、家族の上着掛けとして愛用しています。これは丸棒に穴を開けて、綿ロープを通して天井にフックを付けて吊るせば完成。材料費約2000円、30分ほどでつくれる、真似したくなるDIY収納です。

DIYのハンガーラックとプランターラック

1階に収納スペースがなくて、上着を2階まで持っていくのが面倒でついダイニングチェアの背もたれに掛けてしまう状況でした。それを改善できて空間がスッキリしました。ハンガーラック近くにあるプランタースタンドは、プランターのサイズに合わせてつくったもので、一時は商品化しようと本気で思ったほど気に入っています(笑)

ありきたりの個室も自分好みの雰囲気にアレンジ

今ではフリーのDIYブロガーとして活躍している川名さんは、目下2階、3階のセルフリノベーションを進行中です。2階の寝室は、グリーンの砂壁と年季の入った畳というオーソドックスな和室だったそうですが、床はヒノキの無垢のフローリング、壁は自ら調合した配色の漆喰壁に変更。和モダンな空間に仕上げています。

漆喰壁塗装のインスピレーションは金沢の成巽閣から

壁は、金沢の成巽閣(せいせんかく)の群青の間からインスピレーションを受けて塗ってみました。群青の間とは色は違いますが、黒と青の顔料を混ぜてブルーグレーにしています。初めて漆喰塗りで色ムラはあるのですが、それも味かなと思っています

寝室の真上にあたる3階の個室は、寝室以上に手を加えて床、壁、天井をアレンジ。アトリエとして使っています。

自分で天井を剥がしたアトリエ

リノベーション前の夏場はサウナのような暑さだったそうですが、天井材を剥がしてみると、なんと断熱材が2枚隅に入っているだけという、ほぼ断熱材なしの状態。壁の中も断熱材が入っていないことがわかり、壁は5mm厚のグラスウールを、天井には10mmのロックウールを入れて断熱効果を高めています。

DIYで断熱効果を高めた天井と壁

壁を取り壊すのは時間も解体費もかかりすぎるので、天井を剥がした時に壁上部から入る分だけグラスウールを入れました。壁内の気流を止めるだけでもだいぶ変わりますね。天井材は、本実目透かし加工が施された羽目板で2万4000円ぐらい、床は1平米で1000円という格安の杉材で1万2000円しかかかっていません。相じゃくり加工(板側面に凹凸がついていてかみ合わせてつなげる加工)がされて施工性・メンテナンス性がよく作業もスムーズでした。一方天井の材は、本実目透かしの加工が結構甘くて微調整に時間がかかってしまいました。ワンランク上の材にしても良かったかもしれません

窓枠と床は塗料を揃えて統一感を

窓枠も茶色の塗装をグラインダーで剥がして木板本来の素材感を引き出し、床材と同じ自然塗料「ユーロ」のオイルクリヤーで塗装しています。

年内には1階の残り2カ所の内窓を仕上げて、2階の洗濯物干し場兼物置き部屋と3階の書斎もリノベしていく予定です。資材は自転車で20分ぐらいのホームセンターで調達し、フローリングなどの木材は木材屋さんで購入することが多いですね。これからもお世話になりそうです

自分で作ったものを日常の中で使う。そこに喜びがあり、暮らしの豊かさがある。それがDIYの醍醐味であり、どんなに大変な作業でも使っているシーンをイメージするとワクワクすると語る川名さん。細部まで妥協せずにつくり上げるからこその完成度の高さは、これからますます上がっていきそうです。まだまだ進化中の川名さんのお住まいがどう変わっていくのか、ブログやYouTubeで更新されるのが楽しみです。

 

■概要
・お名前:川名恵介さん
・ブログ:99%DIY(YouTubeでも情報配信中)
・住まい形態:木造3階建
・間取り:4LDK
・DIYした場所:1階LD、2階寝室の壁と床、3階アトリエ
・かかった期間:2014年1月から、これからも
・かかった費用:約70万円
(2020年10月取材時)

取材・文:浜堀晴子/写真:鈴木真貴