「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。
今回訪れたのは、スカイツリーが一望できる東京都墨田区で暮らす川名恵介さんのお住まいです。築約25年の3階建て木造住宅で、引越してきたのは今から6年前。6Kの間取りを4LDKにセルフリノベーションして、明るく開放的な空間になっています。
驚くのは取り掛かった当初、川名さんはDIY未経験だったこと。にもかかわらず、壁、床、天井の解体という大規模工事に挑戦し、好きな素材や色使いで空間を一新。断熱性や採光性も格段にアップさせています。その完成度の高さから、自らのDIY体験をまとめたブログやYouTubeが話題です。そんな川名さんのDIYの秘訣や実際の住み心地について聞いてみました。
DIY初心者で、いきなり天井と壁を壊すところからスタート
家族3人暮らしの川名さんはもともと賃貸マンションに住んでいました。今の家は祖父母の住まいで、お祖母様が介護施設に入って空き家になってしまうため、移り住むことにしたそうです。
笑顔で語る川名さんですが、当時はwebディレクターをしており、DIYとはまったく無縁。釣りのルアーを手づくりしたことはあったそうですが、棚や収納小物などのプチDIYも未経験の状態です。にもかかわらず、いきなり戸建てのセルフリノベーションにとりかかります。しかし決して勢いまかせで始めたのではありません。それは床材や照明の配置を見ても分かります。
何もかも自分でやるのではなく、プロに任せるところは任せるという考えで、電気工事やライティングレールの設置は業者に依頼しています。さらに“初期投資”としてDIYのプロにもアドバイスを求めるなど万全の体勢です。
「ふかし壁」を自作して飛躍したDIYスキルと自信
リビングダイニングの内装は、奥様が里帰り出産しているタイミングに合わせてDIYしたそうで、延べ4人の友人が助っ人に来てくれたと言います。
そう言って苦笑しますが、その後、川名さんは電気の配線や配管を目隠しする「ふかし壁」(せり出した壁)を、たった一人でつくり上げます。
ギャラリーのような空間にしたいとライティングにもひと工夫。色の見え方が自然光に照らされた時に近いようにとRA値95(自然光はRA値100)のLED照明を採用しており、「ご飯が美味しく見える」とご家族からも好評です。
「室温」と「収納」を改善して快適空間を実現
デザイン性だけではなく、川名さんは住まいの機能性アップにも果敢に挑戦しています。夏の熱気、冬の冷気対策として、アルミサッシの窓に木枠の内窓をプラス。それも折れ戸仕様で開閉スペースに場所を取らない細やかな設計です。他にも階段下にロールスクリーンを、天井にはシーリングファンを設置して、1階の冷暖房効率を高める工夫が随所に施されています。
また、収納力アップにも着手。なかでも2年前につくった窓下の収納棚は、川名さんの力作です。
可動棚になるように棚の内側にはダボ穴を施し、左手にある8段の引き出しは、スライドしやすいように両側に1cm角のスギ材を渡して、子どもでも取り外しがしやすいようにと、材の先端を「く」の字に加工するきめ細かさです。
階段側には吊り下げ式のハンガーラックを取り付けて、家族の上着掛けとして愛用しています。これは丸棒に穴を開けて、綿ロープを通して天井にフックを付けて吊るせば完成。材料費約2000円、30分ほどでつくれる、真似したくなるDIY収納です。
ありきたりの個室も自分好みの雰囲気にアレンジ
今ではフリーのDIYブロガーとして活躍している川名さんは、目下2階、3階のセルフリノベーションを進行中です。2階の寝室は、グリーンの砂壁と年季の入った畳というオーソドックスな和室だったそうですが、床はヒノキの無垢のフローリング、壁は自ら調合した配色の漆喰壁に変更。和モダンな空間に仕上げています。
寝室の真上にあたる3階の個室は、寝室以上に手を加えて床、壁、天井をアレンジ。アトリエとして使っています。
リノベーション前の夏場はサウナのような暑さだったそうですが、天井材を剥がしてみると、なんと断熱材が2枚隅に入っているだけという、ほぼ断熱材なしの状態。壁の中も断熱材が入っていないことがわかり、壁は5mm厚のグラスウールを、天井には10mmのロックウールを入れて断熱効果を高めています。
窓枠も茶色の塗装をグラインダーで剥がして木板本来の素材感を引き出し、床材と同じ自然塗料「ユーロ」のオイルクリヤーで塗装しています。
自分で作ったものを日常の中で使う。そこに喜びがあり、暮らしの豊かさがある。それがDIYの醍醐味であり、どんなに大変な作業でも使っているシーンをイメージするとワクワクすると語る川名さん。細部まで妥協せずにつくり上げるからこその完成度の高さは、これからますます上がっていきそうです。まだまだ進化中の川名さんのお住まいがどう変わっていくのか、ブログやYouTubeで更新されるのが楽しみです。
■概要
・お名前:川名恵介さん
・ブログ:99%DIY(YouTubeでも情報配信中)
・住まい形態:木造3階建
・間取り:4LDK
・DIYした場所:1階LD、2階寝室の壁と床、3階アトリエ
・かかった期間:2014年1月から、これからも
・かかった費用:約70万円
(2020年10月取材時)
取材・文:浜堀晴子/写真:鈴木真貴