「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。
旅好きの仲間同士で宿をはじめたい! そんな思いで集まって最初につくったのは、手を伸ばせば触れられそうなくらい江ノ電に近い、干物カフェでした。
サンマの干物とこだわりの卵かけご飯
築年数不明。大正時代から続く仕立て屋さんを、カフェにDIY
江ノ電の線路に沿うように建つ、平屋+2階建ての『カフェ ヨリドコロ』。元は、大正時代から続く仕立て屋さん兼住居だったそうです。
「旅好きの仲間同士で、宿をやってみたいという話がありました。鎌倉の古民家再生プロジェクトを通してこの物件に出会って一目惚れしたのですが、用途地域や環境的に、この物件で宿をやるのは難しくて。であれば、僕たちの活動のゼロ号店という位置づけでカフェをやってみようと思ったんです」
写真左から大和久洋人さん・中田よしのりさん・恵 武志さん・谷和真さん
「江ノ電は単線なので電車の待ち合わせがあるのですが、電車が停止する場所がちょうどお店の目の前なんです。元はすりガラスで店内が見えないようになっていましたが、江ノ電に向き合うようにカウンターを置いて、目の前に江ノ電を見ながら食事をする場所にしたら面白いと思いました」
店内の窓から間近を通る江ノ電を見ながら食事ができます。
DIYをはじめたきっかけ
江ノ電に沿うように建つ建物は、ゆるやかな坂の途中にあります。敷地内に高低差があり、2階建て戸建ての隣に平屋を増築して、ひとつの建物になっていました。
全部屋和室で、2階建ての1階が仕立て屋さん、平屋部分が住宅だったそうです。
「プロに依頼するお金が無かったし、仲間で話し合いながら、自分たちの好きなようにお店をつくりたくてDIYをすることにしました」
「赤いチェックシャツはお揃いではありません」と笑う中田さん、谷さん。
DIYした場所をチェック!
畳を剥がして、床を平坦にする
畳を剥がしたら、床高がかなり上がっていたことが分かったそうです。床下収納のように空いていた空間の掃除をして基礎を補強し、坂に沿って斜めになっていた床を平らにしながらコンクリートを打っていきました。
コンクリートを打った床
生コンの配分も自分たちで調べながらつくっていったそうです。ただ、表面を平らにするのはとても難しかったそうで、仕上げはプロに依頼したとのこと。
畳の床下から出てきた古いアイロン。元仕立て屋さんならではの品は現在、『ヨリドコロ』店内のオブジェになっています。
キッチンに壁をつくる
家庭用のキッチンは飲食店には狭いので、キッチンの給排水を変更してキッチンを大きくしています。
仕立て屋さんと住居を区切っていた壁を取り払って広いカフェスペースにし、逆にキッチンの背面に壁を造作して区切りをつくっています。
解体後の木材を壁材に再利用する
落ち着いた雰囲気の奥のカフェスペース。この部屋の壁は、床や壁を解体してスケルトンにしたときに出てきた端材を取っておいて、壁にランダムに貼っています。
ランダムに木材が貼られた味わい深い壁です。
「木をきちんと貼ろうとすると、1ミリの隙間が気になってしまう。であれば、ランダムに貼って、素人感を無くそうと思って(笑)。それに、解体したときに出た端材がもったいないので、どこかに使いたかったんです」
建具は既存を利用して、アイアン塗装で雰囲気を出す
店舗の入り口は、仕立て屋さん時代の建具をそのまま利用しています。大正時代の建具が現在の建具の規格に合わず、オーダーメイドでつくると予算オーバーになるためですが、アイアン塗装をして店内に雰囲気に合うように工夫されています。
アイアン塗装を施した窓枠
失敗した場所
解体中、構造補強をしている筋交いを取ってしまったそうです。
「これは重要な部材かもしれない…と仲間で話していたのですが、取ってしまいまして。建築士に確認したら、筋交いだから取ってはいけないと言われてもう一度付け直しました」
再び付け直した構造補強のための筋交い
筋交いを取ってしまうとは…、これもDIYの愛嬌でしょうか。新しい部材で筋交いも新しくなったので、結果オーライです。
ストーリーは、葉山の宿に続く
『カフェ ヨリドコロ』のある稲村ヶ崎は、戸建ての多いのんびりとした住宅街。江ノ電が目の前を通る目立つ場所ということもあり、DIYをはじめた頃から近所の人には注目されていたようです。
「『ヨリドコロ』のDIYは約4ヶ月かかったのですが、最初はこの人たちは何者? という目で見られていました。でも、線路沿いの目立つ立地だし、仲間以外にもいろんな人が手伝いにきて、わいわいとDIYをしていたら、徐々に近所の人が声をかけてくれるようになりました。最後のほうは近所の人たちと壁を塗ったりして、稲村ヶ崎の仲間になれた気がして嬉しくなりました」
取材中に子どもたちが「何かちょうだい!」って窓から声をかけていました。店名の通り、近所の子どもたちにとって『ヨリドコロ』は、遊びに行く前に立ち寄るところになっているようです。
DIY中に声をかけてきたご近所さんの一人に、大工のケンさんがいました。
「ケンさんは「素人がちんたらやっているな」思いながら、見ていてくれたそうです。ケンさんも僕たちと同じように古民家を残していきたいという思いがあって、『ヨリドコロ』づくりを手伝ってくれるようになりました。そのうち、ケンさんが持っている葉山にある元漁師の家の活用法について相談を受けました」
このケンさんとの繋がりによって、宿をはじめたくてカフェをつくった旅好きの仲間たちに、宿をつくるチャンスが巡ってきました。
ということで、このDIYストーリーは『葉山の宿編』に続きます。
■概要
・店名:カフェ ヨリドコロ
・住所:神奈川県鎌倉市稲村ガ崎1-12-16
・TEL:0467-40-5737
・営業時間:7:00~18:00
・定休日:不定休
・DIYした場所:2階建ての1階店舗部分・平屋部分
・かかった時間:約4ヶ月
文:石川歩 / 写真撮影:編集部