理想の暮らしとはどういうものでしょうか? その答えは、あなたが何に価値を見いだすかによって異なります。暮らしの多様性に着目し、一歩先のライフスタイルをさぐる企画「Make a good Life!」。
自由な発想で自分らしいライフスタイルを実現する人たちを取材し、新しい価値観と選択肢をご紹介します。
第3回は、足立昭博さんの「バンライフ(VANLIFE)」です。
バンライフとは、車(バン)を生活の中心に取り入れたさまざまなライフスタイルを指します。その定義は幅広く、完全にバンの中で生活する人や、家を持ちながらときおり車中泊をする人、バンを友人との交流の場にする人など、多様な楽しみ方があります。
足立さんのバンライフは、鮮やかな黄色と曲線のフォルムがかわいいキャンピングトレーラーのRoomette(ルーメット)を活用したもの。「内装はどうなっているのか?」という好奇心を抑えきれません。自分だけではなく、みんなと共有するバンライフをつくろうとしている足立さん。さまざまな用途で楽しめるバンライフの魅力とともに、今後の展望についてお話しを聞きました。
1.きっかけは「新しい暮らし方」を実現する人々に出会ったこと
そういった暮らし方を実践する人々と出会い、直接話を聞くうちに「自分も移動可能な空間を所有したい」と思うようになったそうです。購入を決断したのは、心を動かされるキャンピングトレーラーとの出合いがきっかけでした。
Roomette(ルーメット)は、曲線的なフォルムが魅力
海外製の大型キャンピングトレーラーと比較して、Roometteは日本の道路事情や法律にも考慮してつくられています。小型で軽量のため、牽引免許の取得も必要なく、一般的な乗用車で牽引することが可能です。Roometteの一目見たら忘れられない特徴的な形は、キャンピングトレーラーに対して足立さんが抱いていた印象を大きく変えました。
キッチンやシャワーを備えたキャンピングトレーラーもありますが、足立さんのRoometteにある設備は最小限。あえて機能をシンプルにすることで、スペースに余白を残しています。
2.バンライフの魅力はどこにでも自分の空間を持っていけること
Roometteは、やってみたいことを試せる実験場のような役割も担っています。
琵琶湖の湖畔で仕事をしながらの週末
窓から見える景色は、人の気持ちに大きな影響を与えます。足立さんは、移動することで好きな景色を見ることができるバンライフは、このうえない贅沢だと話してくれました。
苦労したのは移動の道選びと駐車場探し
牽引して移動する際、カーナビで案内された道が細くて通れないこともあったそうです。
Google mapのストリートビューで、道幅が狭そうな道路の状態をあらかじめチェックしたり、鋭角な曲道は避けるなどの工夫をしています。
また、トレーラーを所有する人にとって、悩みの1つに挙がるのは駐車場選びです。
日本RV協会(JRVA)は、道の駅やサービスエリアなどの公共駐車場にトレーラーを放置して、ヘッド(牽引してきた自動車)のみで長時間遠出しないよう呼びかけています。
同協会では、牽引車に限らずキャンピングカーでの車中泊について、「公共駐車場でのマナー厳守10ヵ条」をまとめています。また、車中泊者が安心して使用できる場所としてキャンプ場を推奨しているほか、協会が認定した車中泊施設RVパークの情報も発信しています。
車で旅をする人も旅行先の住民も気持ちよく過ごせるよう、駐車場を選ぶ際に配慮することが大切です。
3.内装は「トランスフォーム」!用途に応じた使い方を楽しむ
内装はすべて、足立さんがDIYしました。手間と時間をかけて丁寧につくったものには愛着を持ちやすいです。つくった人の個性がにじみ出るところも、DIYの魅力の1つです。
まずは、みんなが集まった際にくつろげる場所として、ソファベッドをDIYしました。次はお気に入りのアイテムをディスプレイする収納棚。最後は仕事机にもなるテーブルというように、用途とシチュエーションをイメージしながら徐々につくっていきました。
シーンに合わせ空間を作り変えられるソファベッド
シアターにもなるロールスクリーンを取り付けた収納棚
仕事机としても使えるダイニングテーブル
LIFULL Fabで行ったDIY
例えば、「美しい曲線の家具をつくりたくても自分ではつくれないから、工作レベルに合わせてある程度レベルを落とさざるを得ない」ということが起こってしまうと足立さんは指摘します。そんな悩みを解決してくれたのが、LIFULL Fabで利用できる便利な機械でした。
理想のデザインを形にするために、足立さんは主にShopBot(ショップボット)という大判の木材を切削してくれるCNCマシンを使いました。ShopBotは、データを元に、木材の曲線加工や切り抜きを行ってくれる機械です。
車内の家具には軽い素材を使用
4.バンライフの苦労や楽しさはかけがえのない体験
バンライフ実現までにかかった費用と必要な公的手続き
大型のトレーラーを牽引するためには牽引免許が必要ですが、Roometteは重量が750kg以下なので牽引免許がなくても牽引できます。ただし、牽引する自動車の公的手続きとして、牽引登録(950登録)をする必要があります。
高速道路を利用してRoometteを移動させているときの様子
新しい暮らしを実現したい人たちのきっかけになりたい
バンライフを始めたばかりの足立さんですが、普通の生活では得られない体験の連続だと話します。新しい発見はもちろん、想定外のトラブルも含めて楽しむのがバンライフの神髄。バンライフに興味がある人には、「心配や不安はさておき、大きな気持ちでとりあえず踏み出してほしい」という熱いメッセージをいただきました。
5.内装も用途も変幻自在!みんなでシェアする共有型バンライフ
足立さんのバンライフは、キャンピングトレーラーを自分の空間として使うだけではなく、ときには仲間とシェアしながら楽しむ「共有型のバンライフ」。バンライフと一口に言っても多様なスタイルがあるのだと実感します。
Roometteの見た目のインパクト、どんな用途にも対応できる自由な内装、トランスフォームする家具など、足立さんのお話は驚きの連続でした。
自分だけの空間をつくりあげる過程として、ものづくりを満喫している様子も印象的で、こちらまでわくわくしてきます。新しい暮らし方を実践するには、視点の切り替えや柔軟な思考が不可欠なのかもしれません。
■プロフィール
・足立昭博さん
・Instagram:@hiho8120
※足立さんのRoomette の愛称は「hi-ho」とのこと
・バンライフ:始めたばかり
・家電メーカー勤務の会社員