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借りた状態では暮らしたくない!原状回復を見据えた“がっつりDIY”|DIY PEOPLE vol.2

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「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。

ごく普通の3LDK賃貸マンションを、「1部屋は収納部屋」と割りきってDIYした佐々木さんご夫妻の住まい。原状回復を見据えながら床や壁まで変える工夫は、賃貸住まいのお手本になりそう。暖かい色づかいが落ち着く、賃貸DIYの可能性を感じる住まいです。

DIYした場所をチェック!

左:キッチンの収納扉に、レンガ風シートを貼って、雰囲気を変える/右:キッチンのタイル壁に、板をはめて収納を取り付ける

写真左:「よくあるクリーム色の扉だった」というシンク下の収納扉に白レンガ風のシートを貼り、取っ手をガラスに替えてキッチンの雰囲気を変えています。原状回復のため、既存の取っ手は保存しておきます。

写真右:元は、よくある白い壁紙。梁を利用して板をはめこみ、穴を開けられる壁をつくりました。はめこんだ板に、木2枚と棚用の固定器具を打ち付ければ、見せる収納のできあがり。
冷蔵庫の後ろ側は壁で隠すのが一般的ですが、佐々木さんは調理動線を考えて、通路を挟んでコンロと冷蔵庫が向き合うように置いています。冷蔵庫の後ろには板を取り付けて裏側を隠すと同時に、キッチンとリビングに自然な境界線をつくっていました。
この板は、以前運営していた雑貨店の内装から持ってきたもの。今回のDIYでは、この店舗の内装材がいろんな場所で大活躍しています。
この建具も、クローズした店舗から持ってきたもの。背の低いレトロな雰囲気の建具を、目線隠しとしてシンク横に取り付けています。
玄関から入ったときのイメージをがらりと変えられるのが、廊下の床色。佐々木さんは、ヘリンボーン柄のクッションフロアを貼っていました。クッションフロアは厚みのある店舗用を選んでいます。

左:床材を使ったトイレDIY/右:DIYをしたトイレの収納棚

無粋な背面のトイレタンクを隠しているのは、店舗で使っていた床板を張り合わせたもの。タンクを隠している部分は、開けるとボックス収納になっていて、掃除道具などを入れています。
手洗いの水が流れる部分は、100均のボウルに穴をあけて受け皿に。床はレンガ風のクッションフロアを貼っています。
壁にビスを打つことのできない賃貸で活躍するのが「ディアウォール」。天井と床に置いて、柱になる木材を“突っ張り棒”のように設置すると、ビスの打てる柱ができます。佐々木さんは、リビングルームの壁にディアウォールを使って柱を3本立て、その柱にブルーに塗ったベニヤを打ち付けて壁をつくっていました。
ベニヤの壁には飾り棚を付けて、食器類の収納になっています。

左:IKEAの電球をアレンジして、カフェ風の窓辺に/右:額縁を使ってインターフォンを隠す

写真左:作家の友だちにつくってもらったという白格子の建具を、リビングルームの窓辺に立てかけています。IKEAの電球と和紙を使ってDIYしたデザイン照明がアクセントになっています。

写真右:生活感の出るインターフォンは、ダイソーで買った木材を四角形に加工して囲み、額縁を蓋にしてボックスに。壁への取り付けは、無印良品の「壁に付けられる金具」を利用しています。

DIYのきっかけは?

「クローゼット・トイレ・お風呂の取り壊しで、資金が尽きた」

佐々木さんの母親は、子ども服やバッグ・お菓子まで何でもつくる人だったそう。それらをインターネットで売ってみたところ生産が追いつかないほど人気になり、インターネットショップが拡大。その頃に空いていた実家のアパートに店舗を出店し、それから第二子が生まれるまで12年間、営業を続けたそうです。

DIYのきっかけは、取扱い商品のテイストを変えるタイミングで、内装を変えたかったから。それまでは隠していたクローゼット・トイレ・お風呂の取り壊しで40万円かかり、床貼りと壁のしっくい塗りはDIYでやってみようと思ったそうです。

子供部屋の棚

「このままでは暮らしたくない!」

店舗の上階でDIYを楽しみながら暮らしていた佐々木さんご家族。子どもが2人になり、幼稚園に通える場所への引越しを考えて5軒ほど内見をしたそうです。

「どの物件もDIYをすることを想定して見ていました。ここは設備が古くて、団地みたいな室内に抵抗感があったのですが、逆にDIYしがいがあると考えました。優先順位はエリアが一番だったので、幼稚園が近くて通勤もしやすいここに決めました」

賃貸はどうしても原状回復を考えて、住まいの不満を我慢しがちです。佐々木さんご夫妻のように、賃貸でも諦めずに“したい暮らし”に貪欲になると、家ですごす毎日が楽しくなりそうです。

「まだまだ、これからです。ようやく妥協点に近づいてきたので、これからもDIYで変えていきます」。子ども用の机は旦那さんのDIY。転んでも大丈夫なように、四隅を丸めています。

気に入っている場所/失敗した場所/苦労した箇所

気に入っているのはリビングルームの壁。きれいにできたし、ディアウォールを使って壁をつくったりと、たくさんのアイディアを取り入れました。
子供部屋もカラフルにDIY。
失敗してやりなおしたのは、子ども部屋の壁紙。原状回復を考えてマスキングテープで貼っていた壁紙と壁の間に空気が入ってきて、見た目が悪くなってきたそう。
次は空気が入らないように、壁にベニヤを貼ってから壁紙を貼ろうと思ったら、両面テープで貼っていたベニヤが剥がれてきたそうです。

「壁が落ちてきた!って焦りました(笑)」

次にやりたい場所も同じく子供部屋。子ども部屋にある寝室への扉。普段から閉めっぱなしの扉なので、固定棚を取り付ける予定だそうです。

「収納が少ない家なので、元から一部屋を収納部屋と割りきって使っています。ただ、子どもの荷物が増え続けているので、この扉をDIYして収納にしたいと思っています」苦労したのは、クッションフロア。本当は接着剤で接着すればいいのですが、原状回復を考えると接着剤は使えず、両面テープで貼ったそうです。接着剤と違ってテープは空気が入るので、何度もやり直したそう。

※クッションフロアの貼り方:既存の床に太めのマスキングテープを貼って、その上にクッションフロア用の両面テープを貼って、クッションフロアを空気が入らないように貼っていく。

HOME’S DIY Mag編集部の感想

「原状回復しないほうが良いのでは?」と思うくらい、DIYのアイディアがたくさん詰まった住まいでした。DIYしたくてむずむずしている賃貸の皆さんはぜひ、原状回復ができるDIYとしてお手本にしてください。
それにしても、元に戻すのはもったいない! 住人のかけた手間が、住まいの価値に反映されるような未来が、早く実現できるといいなと思います。


■概要
・お名前:佐々木さんご夫妻
・家族形態:夫婦・子ども2人(3歳・5歳)
・住まい形態:賃貸マンション
・間取り:3LDK
・DIYした場所:キッチン・リビングダイニングルーム・子ども部屋・バルコニー
・かかった時間:約2年
・かかった費用:10万円以内
※床・壁材の材料費。その他は以前の住まい・店舗で使用していたものを再利用

文:石川歩/写真・撮影:佐々木様ご提供+編集部撮影