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武骨さと甘さをミックス!余白と照明にこだわったマテリアルフェチの部屋|こだわりの部屋づくりvol.34

こだわりの部屋づくりvol.34|武骨さと甘さをミックス!余白と照明にこだわったマテリアルフェチの部屋(kosuke_yasumaさん)

お気に入りの家具やインテリア、DIYやカスタマイズ、賃貸でも購入物件でも自分らしさに妥協したくない。そんな部屋づくりにこだわった人たちを紹介する「こだわりの部屋づくり」シリーズ。

今回ご紹介するのは、住宅設備の販売・施工などを幅広く行うLIXILでデザイナーを務めているkosuke_yasumaさんのお部屋。
コンクリートがむきだしの高い天井に木の床、インテリアにはたっぷりの布と植物があしらわれています。さまざまな素材が絶妙なバランスでミックスされているこの部屋は、「武骨さと甘さ」がコンセプト。余白のつくり方や照明の当て方にもこだわっています。
以前住んでいた部屋からほとんど持ち込んだという家具へのこだわりやお気に入りのアイテム、余白を生かした開放的な空間づくりのコツなどをご紹介します。

武骨さと甘さをミックスしたマテリアルフェチの部屋

住み始めたのは、仕事の関係で東京に引越しをすることになった約3年前のこと。分譲マンションの一室を管理会社が買い取ってリノベーションし、賃貸物件として出していたこの部屋を選びました。

この部屋を選んだ決め手は3つあります。
1つ目は、天井が高いこと。コンクリートがむきだしの天井は3.2mもの高さがあり、開放的です。
2つ目は、ダイニングの床がコンクリートモルタルだったこと。「一度モルタルの床に住んでみたかった」と、kosuke_yasumaさんは言います。
そして3つ目は、以前住んでいた部屋でDIYしたダイニングテーブルが置ける広さがあったことです。

武骨さ6、甘さ4の異素材ミックスな部屋

部屋のコンセプトは、「武骨さと甘さのミックス」。梁がむきだしのコンクリート、一面だけ黒くした壁、ダイニングテーブルのアイアンレッグが武骨さを演出。そこに、たっぷりの布やドライフラワーなどの小物を使い、甘さをプラスしています。デザイナーのkosuke_yasumaさんは、素材の質感にこだわりがあるそうです。

この部屋だと、武骨さ6、甘さ4くらいの割合ですかね。あと、マテリアル(素材)フェチなところがあって。大量生産によくある樹脂やプラスチックが苦手。コンクリートや和紙などを多く取り入れています

お気に入りは個展で手に入れた壺とDIYしたダイニングテーブル

質感に惚れこんだ壺

最近購入したお気に入りのアイテムは、安齊賢太さんという作家の壺。個展を追いかけて手に入れた思い出の一品です。現在はリビングのローテーブルに置き、実のついたドライフラワーを飾っています。

この質感が好きです。焼き物なんですけど、上から漆を塗り重ねているんです

料理好きが高じて、食器や花器にも興味を持つようになったというkosuke_yasumaさん。カラフルなアイテムよりも、シックな色合いで揃えるのが好きだそうです。

植物が好きで、花が映えるように器の色を調整しています。例えば、赤や黄色の花を部屋に飾るとして、部屋にほかの黄色があると映えなくなります。だから、プラスチックの原色はほぼ使いません。そういったルール決めは、かなり厳しくやっています

自ら設計しDIYしたダイニングテーブルがお気に入り

黒いアイアンレッグと木の天板がオシャレなダイニングテーブルは、両サイドに食器棚を連結できる仕組みです。

デザインの仕事をしているので、自分で設計しました。溶接所に持ち込んでフレームを溶接してもらいました。椅子や棚も同じ太さのフレームでつくってもらったんです

天板に使っているのは、実はフローリング材。一枚板を購入すると費用がかかりますが、フローリング材を張り合わせることで予算を低く抑えることができました。
食器棚部分を含めて2m40cmとかなり大きなサイズですが、ホームパーティが好きでよく友人を招くkosuke_yasumaさんにとって、このサイズは必須でした。部屋を内見したとき「ここならダイニングテーブルが置けるな」というのが決め手になったほど、大切な家具です。

大きな家具を置いても圧迫感が出ないのは、余白を考えて室内での向きを計算しているから。部屋の長辺に対して平行になるように長い家具を置くことで、圧迫感が出ないといいます。

部屋づくりをするときは、『できるだけ大きく、できるだけ長く』ということを考えています

空間ごとのポイント

余白を生かした開放的なリビング

『できるだけ大きく、できるだけ長く』という考え方は、リビングの奥にある窓にも生かされています。窓の部分にだけカーテンを付けるのではなく、壁の全面に一枚布を掛けているのは、面を大きく取って余白を生み出すため。

背景としての余白を考えています。できるだけ面をつくる、長いものをそのまま使う、とか

テレビを置いている台も、同じ考え方に基づき、壁に沿って長く配置しています。ちなみに、この台はコンクリートのブロックと板を組み合わせてDIYしたもので、リビングの中央にあるローテーブルと合わせて4対あります。写真では3台と1台に分けて平行に配置していますが、組み合わせを変えることで正方形にもなるそうです。

ローテーブルだけでなく、リビングの家具はできるだけソファよりも背の低いもので揃えています。3.2mもある天井の高さを生かした、開放的な空間になりました。

照明と植物で大人っぽく仕上げたダイニング

お気に入りのダイニングテーブルの真上に照明を設置していますが、部屋の広さに対して明るさは控えめ。しかし、黒い壁に飾られた花の絵や壺に挿した植物にもスポットライトが当たっているため、空間としては暗く感じません。
kosuke_yasumaさんは部屋づくりにおいて、シーリングライトを使わず、スポットライトで空間の明かりを演出しています。

全部見えているのがあまり好きじゃないんです。いらないものが見えてくるので。見せたいところに明かりを当てて、ほかはブラックアウトするという感じで強弱をつけて照明を設計しています

この壺は引越し後に購入しました。真上にスポットライトを置いたらきれいに見せられる…というイメージが浮かんだそうです。もともとは素焼きの壺でしたが、購入した翌日に、なんと油性ペンで黒く塗りつぶしたとのこと。

花やドライフラワーを挿してきれいに見せるために買った壺です。違う色が入ると植物が映えないと思い、黒く塗りました。これも、カラーのコントロールです

コロナウイルスの感染が拡大する前は、月1~2回ほどホームパーティを開いていたというkosuke_yasumaさん。必ず花を用意し、パーティで飾った後もドライフラワーにしてしばらく飾り続けるそうです。

僕のなかで、部屋の主役は『花』か『アート』に決めています。それ以外はできるだけ見えないようにしたいというか…好きなもの以外は見せない、という考え方です

キッチンはオープン収納で実用的に

料理が得意で、最近はスパイス料理にこだわっているというkosuke_yasumaさん。ホームパーティでも自慢の料理をたくさんふるまうそうです。実用的かつきれいに収納できるのは、オープン収納だからこそ。

見せたいものと見せたくないものがはっきりしています。あとは基本的なことですが、同じ形の瓶を使ったり、調味料を同じ容器に入れてひとまとめにしたり、形を揃えて収納するようにしています

オープン収納だとホコリがたまりやすいのでは…という疑問がわきますが、見えているからこそ掃除が行き届くとkosuke_yasumaさんは話します。

道具も食器も常に見えているから、ホコリがたまったらすぐに掃除します。グラスもダイニングテーブルの脇にある食器棚にオープンに置いて、よく使うようにしています

乾物やキッチン道具といった見せたくないものやパッケージが目立つものは、調理台の下に掛けた布の奥に整然と収納しています。

寝室は甘さを多めにしてやわらかい印象に

寝室は、白を基調に布やドライフラワーをたっぷりと使ってやわらかい印象に仕上げています。ベッドはサイズを測ってすのこを置き、マットレスをひいてDIYしたもの。
壁に貼ったタペストリーは、好きな写真を布にプリントしてくれる「写真ギフト」というサービスを利用してつくりました。シンプルな線の植物柄が、ドライフラワーと絶妙にマッチしています。

寝室の窓もリビングと同様、つっぱり棒を使って壁全体に布を垂らしています。開け閉めするのに不便ではありますが、kosuke_yasumaさんは余白を大きくつくることを重視しているそうです。

部屋づくりの過程

アート、植物、動物モチーフを取り入れる

玄関からダイニングに続く廊下の壁。入居前は全面がOSB合板でしたが、管理会社と交渉して一面だけ黒い壁紙を貼ってもらいました。
そこに空の額縁とドライフラワーアレンジメントを飾り、スポットライトを当てています。想像力をかきたてられる印象的なスペースで、暮らしのなかでアートを身近に感じることができます。

kosuke_yasumaさんは、動物のモチーフも多く取り入れています。ひときわ目を引くのは鹿の頭蓋骨。ソファには毛皮を敷いています。リビングにたたずむ豚は、なんと貯金箱だそうです。

イメージできたところから部屋づくりを進める

以前住んでいた部屋は70m2もの広さがあったこともあり、東京都内へ引越す際特に苦労したのは主に予算面だったそうです。

予算は、東京に来たときにかなり無理をしました。でも、そのときに諦めなかったから今がありますね。イメージがきちんとあるんだったら、ちょっと無理してでも住んだほうがいいです

特にkosuke_yasumaさんは、LIXILで住生活に関わるデザインの仕事をしていることもあり、「家」にかける予算を重視しています。その分、ファッションに対してはあまりパワーもお金もかけていないとのこと。

服へのこだわりで広がる世界よりも、家のほうが自己表現できる幅が広いと思っています。料理とかにも連動しますし

引越し後の部屋づくりは、特に順番を決めずに進めました。以前住んでいた部屋で使っていたお気に入りの家具が、この部屋にピタッとはまったこともあり、大きな家具はほとんど買い足していないとのこと。

きちんとイメージできたところからつくる』という考え方でした。これでかっこよくなる、使い勝手がよくなる、というイメージができなければ、物を買わないです。だから、不便でもそのまま放っておいたときも多々ありました

一方、小物や照明は、この部屋に合わせて少しずつ買い足したそうです。たとえば、リビングにはアルミ製のトランクとロングスパンの照明を購入。照明へのこだわりが強く、廊下やキッチンにもスポットの照明を買い足しています。

衝動買いをすることがほとんどないですね。照明も含めて、ここに置いたらきれいに見せられるな、というのが見えたら買う気になります

ホテルやギャラリーなど住居以外の場所で目を養うことも大事

部屋づくりの参考として、kosuke_yasumaさんは普通の住居はあまり見ないといいます。ホテルや飲食店、ギャラリーや美術館などからインスピレーションを得ることが多いそう。

美術館に行っても、あまり作品は見ていません。『なぜこの作品がきれいに見えるんだろう』ということを考えながら見ています。照明の設定や余白のつくり方の参考になります

これから部屋づくりを始めたい方へ

kosuke_yasumaさんの部屋づくりの原点は、学生のころに訪れたオランダで見たある日常風景でした。家の中が外から丸見えの状態で、シャツを着た男性が子どもとごはんを食べていたとのこと。

それを見て、『粋だ!』と感じました。日本では、家はくつろぐ場所です。便利グッズに囲まれて、カーテンは閉めきって…でも僕は、『見られてもかっこいい』という暮らしに憧れがありました

これから部屋づくりを始めたい方に向けて、kosuke_yasumaさんは「家に人を呼ぶのがいい」と話してくれました。友人を家に呼んでホームパーティをするのが好きなkosuke_yasumaさんならではのメッセージです。

ホームパーティといっても、料理をつくって人を呼んで、お酒を楽しむだけなんですけどね。やっぱり、人を呼ぶと部屋をつくる意欲がわいてきます

いいレストランで食事をすると気分がいいのと同じように、美しい空間をつくって、そこにおいしいものがあるとみんな喜んでくれるのがうれしい…と話してくれました。

■プロフィール
kosuke_yasumaさん
Instagram:@kosuke_yasuma
年齢:39
仕事:デザイナー
間取り:2LDK(53m2)