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住み開きで人とつながる。古民家をセルフリノベーションして重なる暮らしの縁|Make a good Life! vol.5

住み開きで人とつながる。古民家をセルフリノベーションして重なる暮らしの縁(高木正太郎さん、木皿千智さん)

理想の暮らしとはどういうものでしょうか? その答えは、あなたが何に価値を見いだすかによって異なります。暮らしの多様性に着目し、一歩先のライフスタイルをさぐる企画「Make a good Life!」
自由な発想で自分らしいライフスタイルを実現する人たちを取材し、新しい価値観と選択肢をご紹介します。

第5回は暮らし方デザインユニット「KiKi」の高木正太郎さん、木皿千智さんによる「住み開き」です。
築90年、木造平屋建ての古民家。高木さんと木皿さんはこの古民家を友人の手を借りながら7ヶ月かけてセルフリノベーションし、「KiKi千住東の家」として、住み開きを実践していました。(2020年3月まで)

古民家のリノベーションでは手を加えすぎないことを心がけ、人のぬくもりがあふれる落ち着いた空間に仕上げました。人とのつながりを大事にしながら暮らす、高木さん・木皿さんご夫妻にお話を伺いました。

「住み開き」とは


「住み開き」とは、プライベートな空間である住宅の一部を友人や知人、地域住民などにコミュニケーションの場として開放する暮らし方です。開放された空間はセミパブリックスペースと呼ばれ、家の中と外をつなぐ中間的な役割を果たします。

住み開きという暮らし方は、文化活動家・アーティストであるアサダワタル氏によって2009年に発案されました。現在では、家を開くことで生まれる地域交流や趣味を生かした多様な働き方にも関連して注目を集めています。

きっかけは“発信する場所”が欲しいと思ったこと


高木さんは実家が老舗の旅館ということもあり、以前から人が訪れ、過ごす場に興味を持っていました。学生時代には“人が集まる場所”の運営方法を研究していたそうです。一方、木皿さんは“古民家の空間や時間”に魅力を感じていました。

そんな二人が新居を考えたとき、一般的なマンションや一軒家ではなく、古民家をリノベーションして住み開きを実行することは必然だったのかもしれません。

イベントを開ける家が1つの理想でした。住み開きは住居とイベントを行う場所の両方を実現できる生活スタイルです(高木さん)

高木さんと木皿さんの理想は、“発信する場所”と住居の融合です。理想の暮らしが実現できる家を自分たちでつくると決めた二人。DIY可能物件を探していくうちに現在の古民家にたどり着きました。

お茶を楽しめる「暮らしの茶寮」


高木さんと木皿さんは、住み開きを経て、2020年6月に日本茶喫茶「暮らしの茶寮」をオープンしています。

知り合いの茶人と一緒に行動するうちに、お茶の美味しさに気づきました。趣味で終わらせたくないと思い日本茶専門店で働きながら、知識と経験を積んでいます(高木さん)

住み開きの魅力は人とのつながり


住み開きをする以前、高木さんと木皿さんは会社員でした。KiKi千住東の家が完成した後に個人事業主へ移行していきます。現在は、プライベートと仕事の境界線があいまいになっているそう。

プライベートの延長線上に仕事がある感覚です。そんな働き方が自分に向いているのかもしれません(木皿さん)
KiKiには、自分たちが好きなものを置いているので、自然と自分たちと価値観が合う人が集まっている気がします(高木さん)
コンセプトは暮らしの文化をつくる家です。暮らしの中の様々なことにまつわる違和感や欲求をひとつひとつ考え直し、自分たちの手で新しく作り直していくことを大事にしています(木皿さん)

イベントから生まれた新しいつながり

住み開きを続けるなかで、人とのつながりが増えていくと実感した高木さんと木皿さん。イベントを通して、多くの人の縁がつながっていくのを目の当たりにしたといいます。

こぢんまりとしたスペースに集まるので、誰もが話しやすい距離にいます。はじめましてのお客さん同士の会話が発展していくのを何度も見かけました(木皿さん)
住み開きをすることで、違う職業の人とつながる機会ができました(高木さん)

集客手段はSNSや口コミ


高木さんと木皿さんが自分たちで企画するイベント以外に、外部からの依頼で行うイベントもあります。2人は持ち掛けられた企画の運営にも積極的に関わっています。

集客はSNSや口コミが中心です。最初は知り合いに来てもらい、その紹介や口コミから徐々にお客さんの輪が広がったそうです。

紹介や口コミでコミュニティが広がれば、同じようなことに興味があったり、好きなものが似たりしているということが多かったので、自然と会話も盛り上がりました(木皿さん)

古民家は元のよさを生かしてリノベーション


住まいを探すにあたり、古民家以外の物件も内見しましたが、「誰かが用意した感覚」がぬぐえなかったとのこと。自分たちが入り込むことができないような余白のなさが気になったそうです。古民家の魅力について、木皿さんは「肌になじむ感覚がある」と語ります。


古民家の古い天井や柱など、もともとの良さは残し、建物の歴史を受け継いでいくような、そんなリノベーションを目指しました。

全部つくり変えるのではなく、元のよさを引き出す作業を目指しました(木皿さん)

切り出した木材を家のほかの場所で再利用したり、あえて元の壁を残したりといった工夫をしています。


新しくデザインしたのではなく、元からあったものを一度ばらして組み立てなおしたと表現するのが相応しいかもしれません(高木さん)

寝室以外はすべてセミパブリックスペースとして開放

KiKi千住東の家は、平屋の古民家で広さは40m2ほどです。その中のキッチン、リビング、和室はすべてセミパブリックスペースとして開放しています。プライベートスペースとしているのは寝室のみ、元はキッチンだった場所をリノベーションして作りました。
寝室の壁には、明るいカラーの漆喰が採用されています。


漆喰の壁は、友人を呼んで一緒に塗りました。なかなか経験できない漆喰の壁塗りを友人にも体験してもらいながらつくりました(木皿さん)

みんながリビングに向かって座れる間取り


高木さんと木皿さんは、人とのつながりを大切にするため間取りにも工夫を凝らしています。扉を外し、みんながリビングに向かって座れるようになっています。

地下倉庫も周囲の人の力を借りてDIY


穴を掘って枠組みを入れ込んでから、コンクリートを流し込みました。知り合いの建築士さんや近所の大工さんなど、いろいろな人の助けがあってできました(木皿さん)

人がつながる家には、リノベーション段階からすでに多くの人が引きつけられ、縁が生まれていたようです。

自分たちの手で暮らしをつくるということ

高木さんと木皿さんは、2020年6月に「暮らしの茶寮」をオープンするにあたり、キッチンを再びリノベーションしています。経験に裏付けられた技術と自信のおかげで、2回目のリノベーションはスムーズでした。

リノベーションを自分たちの手で成し遂げて、さらには住み開きを経験しているからこそ、今の形で茶寮をオープンできたと思っています(高木さん)

住み開きで気をつけることは近所の方とのコミュニケーション

ご近所の方とコミュニケーションをとっておくのも大事です。周囲の方も新しく来た人のことが気になっていると思います(高木さん)
あいさつに行ったり、自分たちがやっていることをお話ししたりするだけで、相手に安心してもらえるし、ときには助けてくれることもあります(木皿さん)

今後はオンラインを活用し、さまざまな形で人と触れ合える場所にしていきたい

これまでは、住み開きといういわばオフラインの活動を通して、人とのつながりをつくってきました。社会の変化に合わせて、今後はオンラインでも人とつながる方法を実施していきたいと話してくれました。

これから住み開きを考えている人に対しては、「気軽に始めてみるほうがいい」との励ましをもらいました。

料理教室とか、展示会とか、友達を呼んでパーティをするのもいいと思います。自分でやりたいことがあれば、そこから手を付けると始めやすいかもしれません(高木さん)
自分のタイミングで始めたり、やめたりできるのが住み開きのいいところです(木皿さん)

住み開きで人とつながり、暮らしが変わる


高木さん・木皿さんご夫妻は、家の内と外の境界線が溶け合う「住み開き」を通してプライベートな活動と仕事の間に明確な境界がなくなり、自分たちが理想とする働き方ができていると感じました。

いろいろな人に手伝ってもらって施工したという経験からも、住み開きを始める前から、すでにKiKi千住東の家には人の輪が生まれていたことが分かります。住み開きを開始してからはさらに縁が広がり、現在の「暮らしの茶寮」へとつながっています。家を開き、人とのつながりが広がることで暮らしが変わり、人生に彩りがもたらされるのだと教えてもらいました。

■プロフィール
暮らし方デザイン夫婦ユニット
・高木正太郎さん、木皿千智さん
・WEB:https://www.kiki-senjuazuma.site/
・Instagram:@kiki.senjuazuma
・住み開き歴:2018年10月~2020年3月