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壁一面に並べられたレコード愛が過ぎる部屋|あの人の偏愛部屋 vol.2

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何かに夢中になっている人は魅力的です。たとえそれがいきすぎた愛だとしても。
抑えきれない愛を詰め込んだ部屋にお邪魔して、その人のこだわりのライフスタイルを探る企画「あの人の偏愛部屋」

第2回は、シューズデザイナーテガキさんの「レコード愛が過ぎる部屋」です。
壁一面に並べられた大量のレコードと、音楽を聴くことを最優先につくられた部屋に、思わず感嘆の声が漏れてしまいます。テガキさんが特に好きなジャンルはダンスミュージック。その発祥の地であるニューヨークに関連する小物も部屋の随所に配置されていて、音楽とニューヨークへのリスペクトが感じられます。「好きなことを追求した結果、こういう部屋になった」と話すテガキさんに、レコード愛を大いに語っていただきました。

1.レコード愛のきっかけは父親

「僕の場合は、もはやレコードに取り憑かれていて……」と困ったように笑うテガキさん。3万枚ものレコードをコレクションしていたお父さんの影響もあり、物心ついたときからレコードに囲まれて生活してきました。テガキさんのレコード愛は、親子二代に渡る、まさに筋金入りの偏愛。

子ども時代に、よくレコードで遊んで父親から叱られたことを覚えています。今思えば、あの頃からレコードをいじって、DJのようなことをしていました

ジェームス・ブラウンをはじめとする伝説的なシンガーを知ったのは幼少期だそうです。家庭では頻繁に登場するシンガーの話題を、同世代の友人と共有することはかないませんでした。

学校ではJポップしか流行していない時代です。家の中と外では、世界が違う気がしていました。DJという文化が流行し始めて、自分もDJをやることになり、ようやく家にある“レコードの世界”と外の世界で接点が生まれました

レコードの魅力は、その時代の空気を感じられる点

同じ曲のレコードでも、「ステレオとモノラルで録音方法が違うから」と複数枚のレコードを所有する人も少なくないそう。MDなどさまざまなメディアが時代の流れから消えゆくなか、レコードだけは今も根強い支持が残っています。

言葉で表すのは難しいですが、レコードには大人が夢中になる魅力が、確かにあります。ものによって、聞こえ方やライブ感が違うという人もいて、感じ方は人それぞれです。レコードにはその時代の空気そのものが詰め込まれているのではないでしょうか

1枚のレコードには、時代背景や当時の人々の思い、さらには制作に関わるプロたちの物語まで、多くの情報が詰まっている――テガキさんは、そう熱く語ります。

2.コンセプトは「ニューヨーク・音楽」

部屋の壁一面にレコードが並べられている景色は、まさに圧巻です。普通ならテレビを置くスペースもすべてレコードで占められているため、テレビは床に直置き。あくまでも音楽を優先する生活です。

一番好きなジャンルは、曲にのって体を動かしたくなるようなダンスミュージック。テガキさんにとってレコードは、聴くためだけではなく、“創作する”ためのものでもあります。

持っているレコードは材料のようなもの。音はもちろん、ジャケット、写真、フォント、色彩、全てがインスピレーションです

また、テガキさんはHIPHOPとParadise Garageが生まれた都市、ニューヨークに強い憧れを抱いています。

昔は、代々木公園をセントラルパークに見立てた妄想を繰り広げていました

照れ臭そうに話していましたが、大人になった今でもその思いは変わりません。部屋にはニューヨークへのリスペクトを感じさせる小物がそこかしこに置いてあります。
ニューヨークのシンボルであるエンパイア ステート ビルの置物と、自由の女神や街並みをつめこんだスノードーム。ニューヨーク市の愛称であるビッグ・アップルにちなんだリンゴ型がユニークです。

テディベアは、ラルフローレンのものです。実は、ラルフローレン・ポロベアーと音楽には深い関係があります

90年代、HIPHOPのニュースクールダンサーに愛されたラルフローレンとポロスポーツのライン。
その後、カニエ・ウエストが、2004年にリリースしたデビューアルバム『The college dropout』のジャケット写真でラルフローレンのポロベアーセーターを着用してデビュー。世界的なアーティストになっていきます。

レコード収納・スピーカー

レコードは、材料(音のパーツ)とそれを使って作られた曲という分け方で収納しています

レコードを収納しているラックは、レコード店で購入した専用ケースをつなげるのみ。「家具にこだわりはないのですが……」と話すテガキさんですが、スピーカーの位置には細心の注意を払います。

ベッドに腰かけて音楽を聴くことが多いので、座ったときの耳の高さに、2つのスピーカーを置いています

音楽機材

家電を買うためのお金をつぎ込んで購入したのは、こだわりの音楽機材たち。UREI 1620のオリジナルミキサーをはめ込んでいる台は、テガキさんが自ら木の板をノミでくり抜いてつくったDIYです。

3. シンガー、ミュージシャンへのリスペクトから生まれるクリエイティビティ

近年、YouTubeによって、山下達郎さんなどの日本のシンガーの存在が海外の人に知られるようになり、80年代の日本のレコードが爆発的な人気を呼んでいるそうです。

僕は、吉田美奈子さんが好き。強い声に魅力を感じます

吉田美奈子さんご本人のサインが入ったイラストは、特に大切にされている一品。額縁に入れて飾っています。
趣味でイラストを描いているテガキさん。なんと、大きなラジカセを白くペイントした上から、同じイラストを細かい部分まで模写したそうです。小さなラジカセ2つにも、ニューヨークの街並みを描きました。ニューヨークと音楽、そして吉田美奈子さんに対するテガキさんの愛が溢れています。

ニューヨークの街並みにドレッドヘアーで立ち向かう姿は、世界に向けて音楽を発信しているということの表れかもしれない、とか、レコードのジャケットを見ていると、いろいろなことが見えてきて面白いです

レコードのジャケットデザインを、CDに模写しました。真っ白で味気ないCDも、お気に入りのイラストを描くことで愛着が持てるようになります

4.音楽は言語のよう……音楽でつながる仲間を招いて、パーティも計画中

レコードを暮らしに生かすポイント

音楽に限らず、ファッションやアートの知識も豊富なテガキさんは、その知識の源はレコードだと言い切っています。ときには、レコードのジャケットにある色の配列を、デザインの参考にすることもあるそう。

デザインの仕事をしているので、ジャケットの色や文字の並べ方などが気になります。レコードに落とし込まれているありったけの情報から、新しいものを作るという発想で、レコードは、ヒントをくれる本のような存在です

レコードが作られた年代によって、使われている色が違います。60年代、70年代、80年代、90年代と、色味やフォントの組み合わせがすべて異なっています。それぞれからインスピレーションを得ています

玄関に飾ってあるのは、テガキさんが製作した熊手です。同じく、手前の人形と奥の本もテガキさん作。音楽からアートまで、さまざまな手段で自身の世界観を表現しています。

レコード愛で広がる輪

レコードの話をしたいときは、近所に住むレコード好きの友人とお酒を片手にレコード談議に花を咲かせるそう。

同じ音楽を知っているだけで、外国人であっても心の距離が縮まる。音楽が言語みたいに感じます

関西出身のテガキさんは、音楽好きの友人を集めるたこ焼きパーティを計画中。「何個入りのたこ焼き器を買おうか……」と悩む表情は、子どものような好奇心にあふれていました。

■プロフィール
テガキさん
Instagram:@show5orizinal
シューズデザイナー
東京都渋谷区