「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。
今回の取材対象者はなんとLIFULL社内の人間!こんな身近にすごいDIYerがいたのです!こだわり満載で戸建てをセルフリノベしています。ぜひご覧ください!(※社内ですが敬称ありです)
趣味のオーディオを楽しむために理想的な広さ・形のリビングに惹かれて中古の一戸建てを購入した池本さんご家族。1階に家族の個室、2階にリビング・ダイニング・キッチンがあります。リビングの天井は勾配と高さがあり開放的。元々は一般的なクロスとフローリングだったこの空間を中心に、古材やモルタルを使ってインダストリアルなテイストに仕上げています。
「最初に、暮らしたいスタイルを描いてみました」
クールに格好良くまとまっている池本さんのお宅。まずは夫婦2人で一緒に、住みたいお部屋の全体的なイメージをスケッチしたそうです。
特に大きく揉めることはなく、“「暖かい家」というよりはちょっと工場のような硬い雰囲気”に決定。訪れたお店やインターネットで見た画像を参考にしてはいるものの、具体的にお手本と決めているスタイルがあるというわけではないそう。“夫と趣味が合わなかったらキツかったかも(笑)“と奥さま談。
部屋のイメージが決まったら「どこにどんな素材を使えば良いか」を考えることに。
「一見、古材に似ている新材もありますし、古材の雰囲気を出せるペンキもあります。でも、部屋に使ってみると雰囲気が全く違うんで」というお2人が、こだわって選んだ床材は長年使い込まれた古材。ビンテージショップなどに古材や塗料を卸したり、アンティークの家具を販売している『GALLUP』で購入しています。
インターネットで購入したモルタルは何と合計で約2トン!モルタルの粉をリビングがある2階まで運び、水と混ぜて塗るのですが、すぐになくなってしまうので地道な作業の繰り返し。結構な体力勝負といえそうです。
モルタルを塗った上から模様をつけるために使ったのは、なんとピザカッター。モルタルは乾きやすく、乾く前にすばやく模様をつけていく必要があるため、最初はうまくいかなかった部分も。つい曲がって失敗してしまったところは大きな布や額で目隠ししています。だんだんうまくなっていったのが垣間見えるのもセルフリノベならではの面白いところ。
写真左:リビング・ダイニングの間は赤いカラーがアクセント。遊び心あるプレートも、写真右:掃除機や予備のイスは壁にかけて収納。実用とオシャレを両立
キッチンは「GALLUP」にオーダーし既存のものと入れ替えたもの。ステンレスではなく木を使用しています。ここも壁はDIYで青いカラーに。色味が変わる、リビングとの境界の部分には赤い鉄柱を入れることでしまりのある空間になっています。
どうしても生活感が出てしまうスイッチプレートや家事用品は、オシャレな目隠しアイテムを使ったり、壁にかけて見せる収納に。照明も「少しもの足りない」と思ったので、既製品に後からチェーンを巻いているそう。こんなプラスαのDIYは今すぐにでもマネできそうです。
元のナチュラルな木の踏み台に色を塗ったあと糊を塗り、乾ききらないうちにヤスリでこするだけで、タイムスリップしたかのように。
“とりあえず試してみたらいい感じにできたもの”だそうです。ちょっとした小物もお部屋の雰囲気にピッタリ。“これいいな、と思ったものは買ってしまって、あとから使い道を考えます”とのことですが、おおまかな全体のテイストができているからこそ、部屋に似合うアイテムも選びやすそうです。
写真右:“疲れてしまい、塗るのを途中で辞めてしまいました“という階段。意図したものではないそうですが、それがまた味になっているように感じます。もし塗りにくいところがあったら思い切ってこんな風にするのも良いかもしれません。
棚は“何に使うか決めずに買って来た木材を取り付けた”とのこと。廊下は扱いやすいベニヤ板を貼るだけのお手軽リノベ。けれども、雰囲気がやや安っぽいので今後別のものに変えたいと思っているそう。
DIYをはじめたきっかけ
DIY・セルフリノベ暦約6年の池本さん。セルフリノベをする理由はズバリ「安さ」。
最初のきっかけは、欲しいと思った食器棚がとても高かったこと。“木を組み合わせるだけだし自分でできるのでは?”と思って部屋の大きさを測り、エクセルを使って図面を作ることからはじめたそう。このときの「やってみたらできた」という体験が池本さんの原点となっているようです。
実際に費用を比べてみると、リビングの壁のモルタルや庭のフェンスは、業者に見積もりを頼むとそれぞれ100万円くらい。一方、かかった金額はそれぞれ8万円~10万円くらいということで、費用面のメリットはかなり大きいようです。
苦労したところはリビングの床
一番大変だったのはリビングの床。数時間で終わると思ってはじめたものの、3日もかかってしまったとのこと。
最初に洗う必要があったり、木材のサイズがそれぞれ違うのでどうしてもうまくはまらない、というのは古材ならではの大変さ。敷き詰めていく作業はまるでパズルのようです。
電動のこぎりが折れてしまったり、フロアネイル(床用のタッカー)が途中でとまってしまったりと予想外のハプニングも発生。結局は、板に元々穴が開いていたので釘で打つことに。心が折れそうになりながらも、“一度やったら、もう最後までやるしかない”という気持ちでやりとげたそうです。
気をつけたところはやっぱり安全面
実際に住むにあたっては安全面も大切。
「古材はサイズが一定でないので、床にはどうしてもスキマができてしまいます。子ども達が手を挟んだりしないよう、大きなスキマには細く切ったカケラを埋めています」
ささくれなどでけがをしないかなど、触って確認する作業も慎重に。古材はどうしても汚れがあるので、最後にツヤ消しのウレタンでコーティングして衛生面にも配慮しています。苦労の末出来上がった床はツルツルとしていて気持ちがよい手触りで、お子さんがペタンと床に座って遊んでも安心です。
DIYの情報はどこで知る?
「最初に網をタッカーで貼り、網にねじ込むように塗らないとモルタルが落ちてきてしまう」といった素材の特性や作業の仕方はインターネットなどで情報収集しているそうです。ポスターや家具をエイジング加工する方法は、それっぽくなるかな?と思ったものを試してみるなど、知識ではなくひらめきによるものも。
「街中でオシャレな内装を見た時にも『これはどうやってできているんだろう』と思いながら見ています」
日々の積み重ねもアイディアにつながっているようです。
DIY Mag編集部の感想
細部まで目が離せなくなる完成度の高いお部屋。工場のような硬派なお部屋ですが、決して冷たすぎず、親しみやすいのはセルフリノベだからこその雰囲気かもしれません。
最初見た時は「すごく高度なテクニックがいる、上級者向けのリノベかも…」と身構えてしまったのですが、お話を聞くと作業自体は「塗る」「切る」「貼る」といった地道な作業の連続。“一番必要なのは、やろうという気持ち”という池本さんの言葉に、まずは小さなものからはじめてみたくなりました。
■概要
・お名前:池本様
・家族形態:夫婦・子ども2人
・住まい形態:中古一戸建て
・間取り:要確認
・DIYした場所:エントランス・玄関・廊下・階段・リビング・ダイニングキッチン・トイレ
・かかった時間:約3ヶ月
・かかった費用:約100万円(床材は約70万円•壁10万円など)
(取材:2016年8月)
文:早瀬シヲリ/写真・撮影:早瀬シヲリ+池本様ご提供+編集部撮影