「理想の暮らしは自分でつくる!」そんな熱い思いを胸に、DIYで住まいを編集していく“DIY PEOPLE”たち。
古民家、マンション、シェアハウス、賃貸など、さまざまな条件のもと自分たちらしい自由な暮らしを実践する姿をご紹介します。
住宅街の一角にある一軒家。ひと際目を引く、アンティーク調に塗られた玄関のドア。ひと目見ただけで、「他とは何かが違う」と期待感が膨らみます。「ピンポーン」とチャイムを鳴らすと、にっこりとした笑顔でNegoさんが出迎えてくれました。「玄関は、ニューヨークのコンテナをイメージして塗ったんですよ」と、楽しそうに教えてくれました。
築25年の一戸建てを全面DIY!
Negoさんは、ご主人と高校1年生の息子さん、中学2年生の娘さん、小学4年生の娘さんと5人で和歌山県に暮らしています。リビングにおじゃますると、窓から差し込む明るい日射し。白と木目を基調とした部屋に、シャープなブラックが光ります。そして、ところどころに配置されたグリーンが、おしゃれなカフェのよう。センスあふれるNegoさんのお住まいですが、実は築25年あまりの使い込まれた一戸建て。でも、リビングとキッチンを拝見する限り、その面影はまったくありません。
DIYをはじめたきっかけ
元々、ご主人の実家だったというNegoさんのお住まい。今からは想像ができませんが、お嫁入りしてきた時の印象は「暗くて狭い」だったと言います。思い描いていた新婚生活とはほど遠く、家をどうしても好きになることができなかったそう。そんな時に出会ったのが、ごく普通の一軒家をDIYで自分好みに変身させた吉原理映さんの本でした。
「うちと間取りがよく似ていて、こんなふうにできるんだーって思いました。大嫌いな家をとにかく大好きにしたい。ただその気持ちだけで、見よう見まねでDIYを始めたのです」
まずは、リビングとキッチン。自分が一番長い時間を過ごす部屋のDIYに取りかかりました。リビングの壁にはベニヤ板を張り、その上を白く塗ります。キッチンのシンク下の扉にも色を塗りました。そうすると部屋の雰囲気が見違えるように大変身! このことをきっかけに、NegoさんのDIY生活が始まります。
“いいな”と思ったら、まずは“やってみる!”
現在は、英文字やアイアン、ブラックを程よく取り入れたメンズライクな部屋が好みだそう。ナチュラルやポップな時期を経て、今に落ち着いているのだとか。お手本にしている人がいるわけではなく、本やテレビなどを見ていいなと思ったら作ってみる。とにかく“やってみる”ことがNegoさん流。そこで気が付くこともたくさんあると言います。
「リビングの壁にベニヤ板を張っていますが、最初は張らずに直接棚を取り付けていました。すると、棚が突然落ちてきたのです。家の構造上、壁の中はスカスカなんですよね。それは天井も一緒。照明がどんと落ちてきたこともありました。それでベニヤ板を張ったり、天井に木材を取り付けたりして補強する技を覚えました」
お気に入りは、グリーンに彩られたリビングの窓際
どこをとってもうっとりするほど素敵なお住まいですが、お気に入りの場所を伺うとリビングの窓辺だと教えてくれました。カーテンがあまり好きではないので考えた末の木枠だそうですが、光が程よく入り、何よりもグリーンが映える部屋が完成しました。
大好きなグリーンを飾るのに思うような鉢がなかったので、木材を切って鉢を作ったりNegoさんがデザインしたステンシルで描いたり、オリジナルにもこだわっています。
苦手な収納もDIYで上手にディスプレイ
大好きな雑貨や洋服、靴は壁面に飾って収納しています。「収納に扉があると、整理整頓できない性格なんです」とNegoさんは笑いますが、お気に入りのものが目の前にある暮らしは、きっと豊かなものに違いありません。
DIYを子育てにも生かす
Negoさんの“大好き”が詰まったキッチンとリビングを後にし、次は小学4年生の娘さんの部屋におじゃましました。ニューヨーク・ブルックリンをイメージして作られた部屋は、子ども部屋とは思えないほどおしゃれ! ルームファクトリーのシックな壁紙と、Negoさんお手製の机や棚、黒板が見事に調和しています。
部屋のテーマは、「子どもの困ったクセをDIYで解決」。部屋の真ん中に収納棚を置き、左は勉強の部屋、右は遊びの部屋と用途を分けています。棚のボックスには数字が書かれ、それぞれの部屋から取り出すことができます。
「使ったものはそれぞれのボックスに片付ける約束なのですが、先日娘が探しものをしていて、『勉強の部屋、遊びの部屋、どっちにある?』と言われたことがあったのです。ああ、それぞれの部屋の用途をきちんと分かってくれていたんだと嬉しくなりました」
こんな部屋なら勉強もはかどりそう!子育て中の人なら真似したいアイデアです。
気楽に好きなように、楽しんで
ご家族の反応を聞きすると、「家族は協力してくれることもないけど反対もないので気楽にやっています。でも時々、主人や娘が褒めてくれると『やったー』って心の中でガッツポーズしますね(笑)」とのことでした。
失敗した!と思わなければ、失敗じゃない
大嫌いな家を大好きにしたいという思いで、知識がまったくないままコツコツとDIYに励んできたNegoさん。さぞや失敗や苦労もたくさんありそうなのですが、お聞きすると「特になし!」と明快な答えが返ってきました。
「失敗しても直せばいい、隠せばいい。そうすると失敗ではなくなります。失敗したらどうしようとか、どうにもならないと思ってしまったらそれは失敗。ガチガチにしてしまうと次がやりたくなくなってしまう。これでいいんや〜って思って作ることも大切なんです」
また、進化していけることもDIYの楽しみです。例えばNegoさん家の玄関の床は、元々は茶色でした。上から白く塗って、今は板を張っています。変えたいと思ったらすぐにできる。自分で作っていれば修正もすぐにできることもDIYの魅力です。
DIYで手放せない道具は?
最初は、のこぎりと電動ドリルドライバーを購入したそうです。電動のこぎりも持っていますが、動く刃物がこわくてほとんど活用していないというかわいらしい一面もお聞きしました。そして、現在の相棒は『ブラック・アンド・デッカー』のマルチツールプラス。バッテリーが長持ちするところがお気に入りなのだとか。
DIY Mag編集部の感想
壁や棚を作るDIYは誰でも挑戦しやすいけれど、窓や鉢にステンシルを張ったり、部屋にグリーンや雑貨を飾ったり、そのセンスとバランスは誰でも持ち合わせているわけでないもの。組み合わせ方や取り入れ方がNegoさんならではのものだと感じた取材でした。そして、細かいことは気にせずにまずは挑戦! これも大切なことですね。
■概要
・お名前:Negoさん
・Instagram:@chihomi_l
・家族形態:夫婦・子ども3人
・住まい形態:中古一戸建て
・間取り:4LDK
・DIYした場所:キッチン・リビングダイニングルーム・子ども部屋
・かかった期間:約13年
・かかった費用:3〜40万円
文:杉江さおり/写真撮影:藤村のぞみ